生命保険上位6社が06年3月期決算で損失として計上しなければならない、固定資産の含み損が合計で2000億円規模になることが16日明らかになった。減損会計と呼ばれる会計制度の導入に伴う処理だが、損失額は6社の05年3月期最終利益の約3割にも相当する。ただ、各社が保有する国内株式の含み益が株式相場の高騰により上半期で約2兆円膨らんでいることから、財務体質の悪化は免れる模様だ。
減損会計では固定資産の市場価値が簿価を大幅に下回った際に損失として計上する。上場企業や生保などの大企業は06年3月期までに完全導入しなければならない。大手生保は契約者から預かった保険料の運用で、数百棟規模の賃貸ビルを保有しており、特に大きな影響を受けるとみられている。
損失処理額が最も大きいのは、約1兆8000億円(今年3月末現在)の不動産を保有する日本生命で、700億円強の特別損失を計上する予定。低収益の物件を早めに売却してきた第一生命は、100億円強にとどまる。朝日生命は約300億円。今期決算への影響について、日本生命は「期間収益で穴埋めできる」、朝日生命も「期間収益と有価証券の売却益でカバーできる」と話している。住友生命と明治安田生命は、前期で大半の処理を終えた。
経営規模に比べて不動産の含み損が大きい三井生命は、約1000億円の減損関連損失を見込む。05年3月期の最終損益が68億円の黒字だった同社にとっては重い負担で、今期は数百億円程度の最終赤字に陥る見通し。
もっとも、三井生命の9月末現在の国内株式含み益は約1200億円と半年前に比べ倍増した。他社も国内株式の含み益を大幅に増やしている。株式相場の好調が続けば、減損処理をしても、生保各社の財務内容は、おおむね改善される方向だが、株価が急落することになれば、財務への打撃もありうる。【宮島寛】