多数の不当な保険金不払いが発覚し、金融庁から行政処分を受けた明治安田生命保険は16日、歴代の社長経験者を処遇するための相談役制度を廃止する方針を固めた。金融庁に今週中にも提出する業務改善計画に盛り込む。専務以上の取締役が今月末付で一斉退任するのにあわせ、社内に影響力を残す3人の社長経験者も退かせることで、過去の経営との決別姿勢をアピールする。
相談役は社長経験者が会長職を経て就くポストで、現在は土田晃透氏(84)=82~90年旧明治生命保険社長▽波多健治郎氏(77)=90~98年同社長▽大島雄次氏(76)=93~99年旧安田生命保険社長--の3人が在任。親密な取引先との付き合いなどが主な職務で、ほぼ毎日、出社している。
しかし、「経営事項を逐一事前に相談させる」(幹部)ほどの権威を保持した相談役もいるとされ、今年7月に金子亮太郎社長が辞意を表明した後の次期トップ人事でも相談役の介入があったとの指摘がある。
経営責任を自発的に決められなかった同社に対し金融庁は10月、今年2度目の業務停止命令を発動。専務以上の全員を含む役員11人が引責辞任する事態に追い込まれた。「改革は新経営陣に任せるべきだ」との声が社内で高まったのを受け、次期社長の松尾憲治常務(56)らが、相談役廃止を決断した。
ただ、「社長経験者の人脈は会社の財産」と擁護する幹部も多く、非常勤など別の形で処遇を続ける可能性も消えていない。松尾新体制がどこまで抜本的な改革を実行できるかの試金石になりそうだ。【宮島寛】