○日本生命2-1シダックス●
日本生命は投手戦を制した。六回2死三塁から石田の左中間三塁打で同点。さらに捕逸で石田が生還し、逆転した。先発の国安は八回途中まで4安打1失点の好投。シダックスは一回、佐藤の適時打で先制したが、好機に決定打が出なかった。
▽日本生命・岡隆博監督 予想通りの接戦。最後まで息が抜けなかった。バッテリーを中心に、辛抱強く戦えたことが勝ちにつながった。
▽シダックス・野村克也監督 有終の美を飾りたかったが、残念。いい気分で楽天に乗り込みたかった。一度も優勝できず、志太会長に申し訳ない。
◇名将にはなむけ 名門のがむしゃらな意地
楽天監督就任が決まり、この大会限りでアマ球界を去るシダックス・野村監督がうめいた。「弱者は気力でやろうとして、知力が機能しない」
六回。ドラフトで日本ハムにそろって指名された武田-小山のバッテリーが、甘いファーストストライク2球で2本の三塁打を浴びた場面を嘆いてみせた。だがこの回、気力で上回ったのはむしろ、勝者の方だった。「積極的に次の塁を狙う」日生野球を体現した。
先頭は佐々木正。初球の直球を右中間にはじき返すや、打球の行方を見る間も惜しんで三塁を陥れた。2死後、同じく直球をたたいた石田の打球は左中間へ。「三塁まで行けば、何かできる」と走った。「チームを盛り上げたい」という一心で頭から三塁に飛び込み、間一髪セーフ。動揺を誘われたかのようなバッテリーミスの捕逸で勝ち越しのホームを踏んだ。
出はなに先制を許した日生は、三回以降は毎回得点圏に走者を置きながらあと一打が出ない。内外角をいっぱいに使い、要所でするりと逃げるようなシンカーを投げる、シダックスの左腕エース武田に翻弄されてきた。もう、いいようにはさせない。そんな思いを前面に押し出した走りは投手陣も乗せた。エース国安から1年目の山脇とつなぎ、最後の1イニングは14年目の土井。最後の打者をフォークで空振り三振に仕留め、この試合をシダックス野村監督のアマ最終戦とした。
プロ監督として歴代7位の1309勝を挙げた知将・野村監督が残した言葉。「野球はレベルが下がるほど、原点がある。新しい発見が随所にあった」。何を発見したかは言わない。だが、最後の発見をさせたのは、創部77年目の名門のがむしゃらな意地。プロ球界に帰る名将に、ふさわしいはなむけだった。
【藤倉聡子】
○…シダックスの武田は五回まで無失点に抑えながら、六回に2本の三塁打などで逆転された。六回の先頭打者に右中間三塁打を許すと2死後、左中間適時三塁打で同点とされ、さらに捕逸で2点目を失った。「1本目は簡単にストライクを取りにいった。2本目も2死を取ってから、力んで高めに浮いてしまった。1球の怖さを改めて知った」と武田。前日のドラフトで日本ハムから指名を受けた左腕は、社会人最後の大会で露呈した課題をかみしめるように話した。