村上世彰(よしあき)氏率いる投資ファンド「エム・エイ・シー」(村上ファンド)は21日、電子機器メーカーの新日本無線(東京都中央区)に株式公開買い付け(TOB)を行うと発表した。既に保有する2.56%を含め、同社の全発行済み株式総数の50.01%の取得を目指す。同社に対しては紡績大手の日清紡(同)がすでに友好的なTOBを実施しており、村上ファンドはこれに割り込んで敵対的なTOBを仕掛けることになる。
TOBは21日から12月15日まで行い、1株900円で買い取る。買い付けに応じる株数が50.01%に達しない場合は買い付けを中止する。
新日本無線は、日本無線が50.4%の株式を保有する連結子会社。日清紡が今月8日、エレクトロニクス分野の強化を目的に、52.63%保有を目指し、1株840円でのTOBの実施を発表。日本無線は保有する全株式の日清紡への売却に賛同している。
日清紡が日本無線の19.3%の株式を保有する大株主であるため、村上ファンドは「日本無線は日清紡に遠慮して、最高の売却先を探す努力を怠った可能性が高い」と、日清紡のTOBに反対する理由を説明している。
日清紡秘書部広報課は「(村上ファンドが)公開買い付け開始を公告したのは確認しているが、今後の対応については検討中」と話している。【竹島一登】
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新日本無線総務部は「日清紡のTOBに賛同する方針に変更はない」としている。新日本無線株は株価純資産倍率(PBR)が1倍台で推移し、資産に比べた株価が「割安」とされる水準。新日本無線株は21日、値幅制限いっぱい(ストップ高)の前週末終値比100円高の939円で午前の取引を終えた。