「皇室典範に関する有識者会議」の報告書提出を受け、皇室典範改正問題が現実化した中、政府・与党内では「小泉純一郎首相のこだわり度」に注目が集まっている。衆院選の自民党圧勝を受け、求心力を強めた首相のこだわり次第で、政府・与党内の調整の展開が変わってくる可能性があるからだが、改正に向けて「首相は意欲満々」との見方が広がる。
首相は95年、初めて立候補した自民党総裁選の公開討論会で「私は女性が天皇になるのは悪くないと思う。必ずしも男子直系にはこだわらない」と表明。「改革派」のイメージを打ち出す戦略の一環でもあったとみられ、対立候補だった橋本龍太郎元首相との違いを鮮明にすることを狙ったものと解釈された。
しかし、首相就任後も自民党内で女性天皇論が議論になった01年5月、記者団に「個人的には女性の天皇陛下でもいいんじゃないかと思う」と発言。政府が有識者会議の設置を固めていた04年12月には「かつては女性天皇も日本に存在していた。今の時代、女性天皇が現れても異論はないと思う」と語るなど、一貫して女性天皇を容認する発言を繰り返しており、かなり「こだわり」が感じられる。
一方、政府系金融機関改革、三位一体の改革、公務員人件費削減という「小泉改革」の仕上げは年内に決着するとみられ、政府・与党内には、首相がその後、皇室典範改正を政権の中心テーマに据え、政権浮揚の切り札にするとの見方もある。
男系男子維持派からは「織田信長も豊臣秀吉もやらなかったことを小泉がやろうとしている」との批判が聞かれる。しかし、今の首相にとっては、むしろ意欲をかき立てる声になっているとの見方もできそうだ。自民党内の慎重派には「首相なら『女性・女系を認めないのは抵抗勢力』とやりかねない」との警戒感も生まれている。【衛藤達生】
毎日新聞 2005年11月24日 20時59分