女性・女系天皇の容認という皇室の長い歴史に転換を迫る報告書が24日、提出された。「皇室典範に関する有識者会議」の報告通りに法律が改正されれば、皇太子ご夫妻の長女、敬宮(としのみや)愛子さま(3)が皇太子さまの次に、歴史上9人目の女性天皇となる。毎日新聞の世論調査では、87%が女性天皇を支持している。世話をする宮内庁職員はどうみるのか。そして、天皇としての今後の教育は--。
□宮内庁の反応
「今後は政府としての対応に移っていく。小泉首相は次期国会に法案提出ということですので宮内庁としても必要な対応をしていく」。有識者会議の報告について、宮内庁の羽毛田信吾長官は24日午後の定例会見でそう語った。
報告に対し、宮内庁では「お仕えする立場なので天皇が男性でも女性でも変わりはない」と冷静に受け止める職員が多い。昭和天皇時代を知るベテラン職員は「独特の威厳、近寄りがたさのあった昭和天皇を知る世代からすると『時代も変わったな』とも思います」と感慨深げだった。ある職員は「男女同権の時代、女性天皇も当然の時代の流れだ」と話した。
□愛子さまの今
来年4月の学習院幼稚園(東京都豊島区)への入園が決まっている愛子さまはこの日、外出することなく、東京・元赤坂の東宮御所で皇太子ご夫妻のもとで過ごした。
愛子さまは、今年4月からは週2回、渋谷区の総合児童センター「こどもの城」で、同じ世代の幼児たちと歌や紙芝居などのグループ活動に参加している。こうした教育方針は、普段触れ合うことの少ない同世代の幼児との活動を通して社会性を身につけてもらう狙いからだ。
皇太子さまは今年2月の記者会見で、自身の体験と照らし合わせて、「愛子が公務を始めるというのではなく、私たちが(公務を)やっている姿を見せることも大切」と話している。
今年の正月にはこま回しやカルタ、羽根突き、習字など日本の正月の伝統行事を体験したほか、和歌の調子に似た童謡を学んでいるという。ある宮内庁幹部は「和歌は皇族の大切なたしなみ。七五調の童謡を教えることも将来を見据えた取り組み」と話し、女性皇族としての教育を受けている。
□両陛下も「改革」
皇太子さまが幼少の時には、両陛下の方針で、従来の皇室の慣例を破り、専任の養育係を置かずに両陛下が直接、養育にあたるという「改革」があった。
皇后さまは、世話をしてくれる人たちのために、ルーズリーフに育児のポイントを書いたメモを残した。これは皇太子さまの名前、徳仁(なるひと)から「ナルちゃん憲法」と呼ばれた。
学習院などでの教育のほか、専門家からの進講では皇族としての品位を身につけ、国民から人間的に尊敬される人間づくりを目指す内容も含まれた。愛子さまの今後の教育計画は、こうした皇太子さまの実績を参考に進められるとみられる。【遠山和彦】
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男系男子継承の維持を求めて活動している団体は、それぞれ有識者会議の報告内容に反対する声明を出した。
「皇室典範を考える会」(渡部昇一代表)は「なぜこれほど急いで決めようとするのか。答申にみられるのは単に目先の事象に振り回される姿でしかない。有識者というならば、曇りなき伝統を守るためにこそ知恵を出すべきではないか。政府は拙速を避け、慎重に対処することを強く求める」。「皇室典範問題研究会」(小堀桂一郎代表)も「11カ月を費やした論議で、この程度の結論しか出せなかったことは会議の力不足を証明するものだ。有史以来の不動の伝統に致命的な傷を負わせる拙速な姿勢に怒りを禁じ得ない」などとした。