サッカー・ワールドカップ(W杯)は第7日の15日、B組1次リーグでスウェーデンとパラグアイが対戦。ともに堅い守りを見せたが、スウェーデンが終了間際の得点で1-0で接戦を制した。スウェーデンは前半、高さを生かしてロングボールで攻めたが、詰めが甘く無得点。後半も途中から前線の人数を増やし攻め続けたが、ゴールを割れず。しかし、後半44分に右クロスをアルベックが頭で折り返し、ユングベリがヘディングで押し込んだ。パラグアイは最終ラインが粘り強さを守備で奮闘。だが、シュート16本を放ちながらも精度を欠き、FW陣にも精彩がなく、攻撃に幅を出せなかった。
◇後半44分、待望の決勝ゴール…ユングベリがW杯初めて
ユングベリがチームを救った。
初戦のトリニダード・トバゴ戦に続き、またもスコアレスドローか。重苦しいムードが漂った後半44分、アルベックが浮き球で中へ折り返したボールを、飛びつくように頭で押し込んだ。自身W杯初のゴールで、決勝トーナメント進出に王手をかけた。
「自分で言うのも何だが、本当に重要なゴールだった」
ハーフタイム中、緊急事態がスウェーデンのロッカーを襲っていた。イブラヒモビッチ、ラーションの両FWと攻撃的MFのユングベリは欧州予選で20得点(10試合)をたたき出し、「3本の矢」と恐れられている。だが、その中心にいるエースのイブラヒモビッチが足の付け根付近を痛め、後半は退いたのだ。
予兆はあった。途中から動きがおかしくなった。前半終了間際、GKからのロングフィードをパラグアイDFが空振りし、ボールはイブラヒモビッチの足元にこぼれた。完全にフリーな状態。いつもだったらやすやすと決めているはずが、そのシュートは弱々しく、GKの真正面にボテボテで転がっていった。
ラーゲルベック監督は試合後、「イブラヒモビッチは足の筋肉を負傷した。ドクターから、後半も使えば悪化して最悪、戦線離脱する可能性があると警告された。状態はそれほど悪くないと思うが、彼を完全に失うリスクは冒せなかった」と明かした。難しい選択だったが、代わりに投入したアルベックが、最後にアシストという大きな仕事をした。
「控え組がよくがんばった」。こうたたえた指揮官は、「まずは勝利の余韻にひたりたい。イングランド戦の作戦を考えるのはそれからだ」と疲れた顔で語った。【安間徹】
◇ボバディージャ(パラグアイGK・30歳)…奮闘も及ばず
スーパーセーブを連発したが、最後に力尽きた。
本来は控えGKだ。だが、5日前のイングランド戦で突然、出番は回ってきた。0-1でリードされた前半8分、正GKのビジャルがスライディング時にふくらはぎを痛めたのだ。心の準備など整っているはずもない。だが、身長192センチ、88キロの恵まれた体格を生かしたパワフルなセーブでイングランドに追加点は許さなかった。
「ビジャルの故障はショックだが、われわれにはまだやらなければいけないことが残っている」。そう言って臨んだスウェーデン戦も、後半44分に失点するまで獅子奮迅の働きを見せた。枠内に飛んできたシュートだけで10本。ほとんど休む間もなかったが、代表出場歴わずか7戦目とは思えない度胸と読みの確かさで、チームを鼓舞し続けた。
試合後、ゴールマウス前でぼうぜんと立ち尽くしたまま動けなかった。両目は涙でぬれていた。
かつてチラベルトのような個性的な名GKを生み出したパラグアイ。1次リーグ敗退は決まったが、意地は見せた。【安間徹】
毎日新聞 2006年6月16日 8時19分 (最終更新時間 6月16日 9時49分)