○楽天6-3阪神●
楽天が連敗を2で止めた。1点を追う九回、2四球と犠打で1死二、三塁とし、鉄平の右前打で逆転。その後も敵失に乗じて加点した。新人・青山は初勝利。阪神は五回、矢野、赤星の適時打でリードを奪ったが、抑えの久保田が制球難で自滅した。
▽阪神・岡田監督 久保田はもうちょっとピシッとせんとなあ。結局、四球やろ。一番やったらアカンこと。ウィリアムスは去年と同じように、ボールに切れがあった。
▽楽天・野村監督 野球はゲームセットまでわからない。方程式を崩したんだから。接戦(で勝負を決めるの)は送りバント。ウチはみんな決めてくれたよな。
◇選手も監督も、ようやくチームの土台作りに手応え
送りバント、堅実な打撃、走塁--。楽天は基本に徹しながら、セ・リーグ首位の阪神に立ち向かい、01年以来5年ぶりとなる甲子園での勝利を野村監督にプレゼントした。
九回。阪神の抑え・久保田から連続四球を選んで無死一、二塁とし、代打・酒井が三塁線ギリギリに犠打を転がして1死二、三塁。続く鉄平がスライダーをシンでとらえ右前に逆転打を放つ。高須の四球で1死一、二塁となり、憲史の投ゴロが一塁悪送球を誘った場面。ここで高須は、打者走者が一、二塁間に挟まれるのを見て、一気にホームを陥れた。
酒井、鉄平、高須には、それぞれ野村監督から称賛の言葉が贈られた。「プレッシャーのかかる場面で酒井が、よく決めてくれた。鉄平はレベルスイングだから、ああいう打球が打てるんだ。だから打率もいいし、いろんなコースに対応できる。高須の判断も良かったよな」
古巣相手に勝利を飾り、三塁ベンチ側の阪神ファンからも大きな声援を受けたことを「おばちゃんの黄色い声援ばかりだったろ」とはぐらかしながら、野村監督は付け加えた。「甲子園初勝利? 初めて来たんだから大騒ぎすることじゃない。ここ5、6試合、いい内容が続いているんだから」と。殊勲打の鉄平も「試合が形になってきた」と言った。選手も監督も、ようやくチームの土台作りに手応えを感じ始めたようだ。
【栗林創造】
◇帰ってきたウィリアムス
ついにウィリアムスが、甲子園のマウンドに帰ってきた。
試運転ではない。1点リードした七回。登場した状況も、与えられた役割も、リーグ優勝に貢献した昨年と、まったく同じものだった。
代打の佐竹を直球で、続く鉄平をスライダーで、空振り三振に切って取る。そして高須をスライダーで遊ゴロに仕留めてみせた。わずか9球でキッチリと仕事を終え、これも昨年と同じようにマウンドを降りて、救援陣に後を託した。
直球は最速143キロと少し物足らなかったものの、スライダーの切れは抜群。左打者の鉄平から三振を奪ったスライダーは、コースも申し分無し。腰が引け、腕が縮まったまま、鉄平のバットはむなしく空を切った。
開幕前に左ひざを手術し、米国でリハビリを続けていた。初めて出場選手登録された30日には、「試合を見ていて七回になると、つい興奮してしまっていた。自分がそこにいるはずなんだ。すぐにでも1軍に上がってチームを助けたいってね」と話していた。
この試合、岡田監督は同点とした五回1死二、三塁の場面で、先発の杉山に代打を起用している。これも、ウィリアムスの復帰で、終盤の投手起用に余裕が生まれたから。阪神自慢の救援陣は、九回に久保田が楽天につかまり、ウィリアムスの初登板を勝利で祝うことはできなかった。しかし復帰戦で左腕が投じた9球は、阪神にとって大きな収穫だった。
【栗林創造】
毎日新聞 2006年5月31日 21時53分 (最終更新時間 6月1日 0時51分)