「水谷建設」(三重県桑名市)の脱税事件で、東京地検特捜部は19日、同社と取引が多い準大手の総合建設会社(ゼネコン)「前田建設工業」(東京都千代田区)の前田又兵衞・名誉会長や川嶋信義・副社長ら同社首脳から、一斉に事情聴取を始めた模様だ。前田建設と水谷建設の間では多額の不透明な資金がやり取りされているとされ、特捜部はその経緯や趣旨について説明を求めたとみられる。
前田建設は水谷建設に多数の工事や事業を下請けに出し、首脳同士も人的関係が深いとされる。特捜部は脱税事件に関連して、10日に前田建設本社、11日に東北支店を家宅捜索。押収資料の分析などから両社間の資金のやり取りが浮上し、同社首脳からの聴取が不可欠と判断したとみられる。
東京電力福島第2原発の残土運搬事業では、水谷建設が東京電力から残土処理を請け負った前田建設の下請けに入り、孫請けへの外注費を水増ししたとして03年、名古屋国税局から約1億3000万円を追徴課税された。また、水谷建設が02年に佐藤栄佐久・福島県知事の実弟企業の旧本社跡地を約9億円で購入し、不当な高値だと指摘された問題では、前田建設が前年、この土地を担保にして実弟企業に4億円を融資していた。
こうした資金の流れ以外にも、前田建設から水谷建設に対して億単位の資金が流れていたとされ、特捜部は同社首脳から詳細に説明を求めたとみられる。
法人税法違反容疑で逮捕された水谷建設元会長の水谷功容疑者(61)は調べに対し、既に脱税の事実を大筋で認めたとされ、特捜部は前田建設との間の資金の流れなどについても、追及しているとみられる。
毎日新聞 2006年7月19日 15時00分