福島県発注工事を巡る汚職事件で、前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)側へのわいろとなった土地取引による不当利得が、約1億7000万円に上ることが東京地検特捜部の調べで分かった。実弟の佐藤祐二容疑者(63)=いずれも収賄容疑で逮捕=は調べに対し、土地の価格を8億円と認識していたと供述。最終的には祐二容疑者の言い値の約9億7000万円で売却されており、差額を不当利得と判断したとみられる。特捜部は、こうした経緯を前知事も把握していた疑いが強いとみて追及している模様だ。
特捜部は、土地取引そのものをわいろととらえ、その価格(約9億7000万円)をわいろ額としている。今回判明した不当利得は「実質わいろ額」といえるもので、1億7000万円にも及ぶことは、事件の悪質性を示している。
問題の土地は、祐二容疑者が経営し、前知事も取締役を務めた「郡山三東スーツ」が、郡山市内に所有していた旧本社跡地。これまでの調べでは、木戸ダム工事を共同企業体で受注した前田建設工業(東京都千代田区)が、前知事側から便宜を受けた見返りに、入札から約2年後の02年8~9月、水谷建設(三重県桑名市)に指示して約9億7000万円で買い取らせたとされる。
関係者によると、祐二容疑者は特捜部の調べに対し「土地の値段は8億円くらいでいいと思った」と供述したとされる。しかし、実際には02年8月28日、水谷建設はこれより7000万円高い価格で土地を購入。さらに同年9月30日、祐二容疑者が経営する紳士服販売会社「オックスフォード」(清算)に融資する形で、1億円が増額されていた。
いずれも祐二容疑者の要求によるものとされ、前田建設幹部らは特捜部の調べに「祐二容疑者の言い値だった」と供述しているという。
特捜部は、今回の土地取引は、業者側には本来必要がなく、資金繰りに苦しんでいたスーツ社にとっては都合がいいため、時価を超える土地取引そのものをわいろととらえている。
毎日新聞 2006年10月26日