大相撲春場所は5日目の15日、今場所初めて横綱、大関が安泰。栃東は雅山を左からいなして降し5連勝。朝青龍は安馬を万全の攻めで相手にせず、白星を先行させた。平幕の鶴竜が玉乃島に敗れ全勝は栃東だけとなった。白鵬、千代大海、琴光喜ら計6人が1敗で追う。
◇がけっぷちから一転、5連勝…栃東、本来の相撲が戻ってくる
幕内でただ1人、土つかずの5連勝。カド番大関の栃東が、再起の場所で存在感を示している。
この日は過去18勝16敗の雅山が相手。平幕とはいえ、2日目に朝青龍を寄り倒した強烈な突きは健在だ。これまでも突き放されて敗れる相撲が多かっただけに、栃東は「突っ張られ体が起こされないように」と冷静だった。立ち合い、幕内最重量の当たりを受け止めると、素早い左からのいなし。突然目の前の相手を見失った雅山は、前のめりで一直線に土俵下へ。栃東は左から上手をなぞるだけで良かった。
「後悔しないように頭から行った」という雅山だが、その心中は栃東に見透かされていた。「仕切っていて(頭で来る)そんな気がした。うまく反応できた」と栃東。北の湖理事長が「突っ込む雅山の足がそろうのを、しっかり見て、いなしていただろ」と評した技ありの突き落とし。的確な反応といい、本来の相撲が戻ってきた。
昨年末に古傷の左ひざを手術し、強行出場した初場所は5勝10敗。その千秋楽には「(春場所には)進退をかけて臨む」と決意するほど追い込まれていた。師匠で父の玉ノ井親方(元関脇栃東)は「(序盤の)5日間が勝負と決めていた。うまく乗り切れたのは大きい」と胸をなでおろしたが、本人は「とにかく勝ち越すことが一番」と手綱を緩めない。
がけっぷちから一転、場所を盛り上げる存在へ。過去2度の大関陥落から返り咲いた闘志は、揺らいでいない。【和田崇】
毎日新聞 2007年3月15日 19時59分 (最終更新時間 3月15日 21時11分)