記者の質問に答えてうつむく安倍首相=首相官邸で28日午後6時3分、山本晋撮影
松岡利勝農相の自殺は、現職閣僚の自殺という戦後例の無い事態だけに、夏の参院選を間近に控えた安倍政権に深刻な打撃を与えた。年金記録の不明問題で安倍内閣の支持率が急落した直後だけに、「政治とカネ」をめぐり世論の批判を浴びていた農相の自殺はさらなる政権のイメージダウンにつながることは確実だ。与党内からは「年金、農相自殺という二重の衝撃で、参院選は相当厳しい選挙になる」(津島派幹部)と国会閉幕後の内閣改造も含めた態勢立て直しが必要との見方が出始めており、安倍晋三首相は厳しい局面に直面した。
安倍首相は28日夕、首相官邸で記者団に対し、農相の自殺に関する自らの責任について「当然首相として、私の内閣の閣僚の取った行動に対して責任を感じている」と述べ、任命権者としての責任を認めた。今後の政権運営に与える影響についても「有能な農相だった。それだけに政権への影響は大きいと思う」と認めた。また、後任人事については「農水省改革に情熱を持って取り組むことができる人を選びたい」と語った。首相は松岡氏の後任人事について、天皇陛下が30日に欧州訪問から帰国されるのを念頭に調整を急ぐ考えでいる。
さらに首相は、官製談合事件で告発された農水省所管の「緑資源機構」の関連団体から献金を受けていた問題については「捜査当局から松岡農相や関係者を取り調べたこともなく、取り調べる予定もないと発言があったと承知している」と強調した。
首相は松岡氏の光熱水費問題をめぐり、法的な問題はないとの立場を示し、これまで擁護していたが、与党内からも「国会終了後に自ら辞任すべきだ」(金子一義衆院予算委員長)など自発的辞任を促す声が出ていた。松岡氏を擁護し続けたことも含め、野党は首相の任命責任を追及する構えだ。【中川佳昭】