【ニューデリー=岩城聡】国際的な受注合戦が続くインドの高速鉄道建設プロジェクトの第1弾として、ムンバイとグジャラート州を結ぶ区間で日本の新幹線方式の採用が最有力となった。同区間の距離は約500キロで総工費は1兆3000億円超。日本勢が車両や運行システムなどを包括的に受注するのは、2007年に全線が開通した台湾に続き2件目になる。実現すれば官民協力による日本のインフラ輸出に弾みがつきそうだ。
日印両政府は13年末から共同で事業化調査を始めており、今年7月に最終報告をまとめる。
日本から調査に参加する国際協力機構(JICA)は28日、首都ニューデリーでの高速鉄道に関するセミナーで、事業化調査の最終報告が「新幹線方式が最適」という結論になるとの見通しを示す。インド鉄道省の高官も日本経済新聞に対し、「日本の技術は世界一であり、ともにこのプロジェクトを進めたい。我々は『正しい方向』に進んでいる」と語った。
セミナーには北川イッセイ国土交通副大臣のほか、日本企業連合で受注を狙うJR東日本の深沢祐二副社長、川崎重工業の大橋忠晴相談役、日立製作所の幹部らが出席する予定。
同区間の高速鉄道は17年にも着工するとみられ、日印は事業化調査の終了とともに、資金調達策など新幹線方式の導入に向けた詳細の詰めを急ぐ。日本の国交省が立ち上げたインフラファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」やJICAによる政府開発援助(ODA)を組み合わせる案が浮上している。
「メーク・イン・インディア(インドでつくろう)」として製造業の振興を推進するインドのモディ首相は車両の現地生産などを条件とする可能性が高く、日本勢がどこまで受け入れるかも焦点になる。
インド政府などによるとムンバイ―アーメダバード間の総事業費は7000億~8000億ルピー(約1兆3000億~1兆5000億円)で、12の駅をつくる。最高速度は毎時320キロで、移動時間は現在の約8時間から2時間半程度になる。
インドは現在、デリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタの主要4都市を高速鉄道によって結ぶ「ダイヤモンド四辺形」として9路線の建設計画を進めている。ムンバイ―アーメダバード間では河川の下にトンネルをつくる必要があり、インド側は青函トンネルなどを建設した日本の掘削技術を評価している。開業50年で乗客死傷事故ゼロという安全性や数分間隔で運行するノウハウなども重視したもようだ。
インドの高速鉄道計画にはフランスやスペイン、中国も強い関心を示しており、残る路線を巡り各国の激しい受注獲得競争が続きそうだ。
グジャラート州は昨年5月までモディ首相が州首相を務めていたお膝元。モディ氏がスズキの子会社のマルチ・スズキなど自動車企業を積極的に誘致し「次世代の自動車産業の集積地」として急速に拡大していることから、日本など外資系企業の進出が活発になっている。