【ワシントン=共同】火星の気候が湿潤だった約43億年前には、全表面積の19%を占める広大な海が北半球にあったとする研究結果を、米航空宇宙局(NASA)のチームが米科学誌サイエンスに5日、発表した。
水の体積は推定約2千万立方キロ。海は、場所によっては1.6キロ以上の深さがあったとみられる。今は乾ききった赤い惑星に長い期間にわたって大量の水が存在したことになり、NASAの研究者は生命を育む環境があった可能性が一層高まったとみている。
NASAのゴダード宇宙飛行センターのチームは、チリにあるVLT望遠鏡やハワイにある赤外線望遠鏡などを使い、火星の表面に残る水分の痕跡を精密に観測。地表から水が蒸発したことを示す重水素と呼ばれる元素の比率や、火星から飛来した隕石(いんせき)の分析結果などから、太古の火星に存在した水の量を推定した。
火星は北半球に低地が広がり、南半球にはクレーターや山に覆われた高地がある。チームは北極の氷を取り巻くような形で北半球に海があったとみている。NASAはこの海の面積の割合は、地球であれば大西洋に匹敵すると指摘。火星の水はその後、両極の氷を残して9割近くが蒸発した。