【モスクワ=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領の側近である南部チェチェン共和国のカディロフ首長は8日、野党指導者ネムツォフ元第1副首相の殺害事件への関与を自供したチェチェン共和国の治安部隊の要員だった男を擁護した。そのうえで犯行の背景には欧米社会のイスラム教への態度に対する怒りがあったとの考えを示唆した。
捜査当局によると、ネムツォフ氏はイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したフランスの週刊紙シャルリエブドへのテロを非難したことでイスラム過激派から脅されていた。
カディロフ氏は逮捕されたザウル・ダダエフ容疑者について「信心深い男で(同紙の)活動や風刺画の掲載を支持する発言に衝撃を受けていた」と強調した。チェチェンでの治安部隊の要員としての長年の功績にも言及し「真の愛国者だった。彼はロシアに害することは何一つできなかったはずだ」と語った。
プーチン氏に近いカディロフ氏の発言には西側メディアによる預言者ムハンマドの風刺画の掲載が事件の一因となったとの見方を示し、プーチン政権の関与を疑う欧米各国をけん制する狙いもあるとみられる。
ロシアの野党勢力からはダダエフ容疑者ら実行犯が自ら犯行を計画したとの捜査当局の説明に疑問の声も上がっている。インタファクス通信によると、ネムツォフ氏の側近の野党指導者であるイリヤ・ヤシン氏は8日、事件の首謀者は政府内にいるとの見解を明らかにした。