全国規模の電気のやりとりの司令塔となる「電力広域的運営推進機関」(広域機関)が1日、発足した。電気が足りない地域をいち早く把握し、余裕のある電力会社に送電の指示を出すことで停電を防ぐ。電力自由化で電力業界への参入増加が見込まれる中、電力を全国に安定的に供給する重責を担うことになる。
広域機関は、政府が進める電力システム改革の第1段階に位置づけられている。理事長に就任した金本良嗣・政策研究大学院大学副学長はこの日の記者会見で「改革がスムーズに進むよう最大限に知恵を絞りたい」と抱負を話した。
広域機関は国の認可法人で、すべての電気事業者に加入義務がある。都内に事務局を置き、加入企業の出向職員ら約110人が実務に当たる。
これまでは、ある地域で大規模な災害が起きたり、電力消費が急増するなどして電力不足が懸念される場合、電力会社が個別に電力のやりとりの交渉をしていた。
広域機関は全国の発電所の運転状況などを監視し、電力不足の地域を迅速に把握する。余裕がある電力会社に送電の指示を出し、電力不足をすぐに解消できるようにする。従わない場合は制裁金を科す権限もある。
全国規模での送電線整備も手掛ける。これまでは電力会社がばらばらに発電所や送電線の設置計画をつくっていた。これからは広域機関が計画を取りまとめる。
課題は、東日本と西日本の周波数の違いだ。東日本大震災直後、東京電力管内は原子力発電所の停止などで電力不足に陥った。首都圏では地域ごとに電力供給を止める「計画停電」を実施した。
このとき、西日本の電力会社は電気が余っていたが、東西の周波数が異なっているため十分な供給ができなかった。広域機関は東西で十分に電力のやりとりができるよう周波数を変換する設備を増強する。現在は120万キロワットにとどまる変換容量を、将来は300万キロワットまで増やす考えだ。