その日が近づくにつれてギリシャの選択肢が狭まりつつあるように見えるが、ギリシャ政府が代替案の1つとしてロシアとの戦略的提携を検討する時なのだろうか。ギリシャのチプラス首相が8日にロシアのプーチン大統領を訪問すれば、その答えは明らかになるかもしれない。
ギリシャのチプラス首相=AP
チプラス氏は、海外の全債権者と債券保有者に対する債務をデフォルト(債務不履行)し、ユーロ圏から離脱して、ロシア政府から短期融資を受けて銀行システムが崩壊するのを防ぐという誘惑に駆られるかもしれない。その代わりに、チプラス氏は欧州連合(EU)の対ロシア制裁の延長を拒否することを申し出る可能性がある。ギリシャ政府は、ロシアの領土を迂回してカスピ海産ガスを輸送できるとEUが期待するアドリア海横断パイプラインの計画をボイコットするかもしれない。このパイプラインは500キロメートル以上がギリシャ領を通る予定で、これは経由国の中で最長だ。
これは、あくまでも状況がそれだけ単純であればの話である。こうした取引の合理性についての全ての観測を考慮しても、いくつもの理由から、その実現は極めて疑わしいと言えよう。
■ロシア、融資はおそらく不可能
まずはじめに、プーチン氏がギリシャに多額の融資を行うことはおそらく不可能だからだ。ロシアの経済状態は良くない。世界銀行による最新の報告では、ロシア経済は今年、主に石油・ガス価格の下落により3.8%のマイナス成長が予想されている。経済制裁はまだ大きな影響を及ぼしていない。しかし、制裁はロシアへの投資減少に効果を見せており、同国の将来的な成長力を低下させることが見込まれる。エネルギー価格の下落も制裁の効果を高めている。
もちろん、ロシアは破産するような状況ではないが、同国の外貨準備高は著しく減少している。ゆとりが少なくなれば、欧米諸国の制裁や経済の動揺による影響を受けやすくなる。
ギリシャは、明らかに自国の経済危機対応に注力している国に縛られることをどこまで許容できるかを考える必要がある。一方、ロシアは、ユーロ加盟国が何十億ユーロという融資をギリシャ経済につぎ込んでいることを意識しているだろう。ロシア政府は同様の損失に耐えられる状態にはない。