金融庁は14日、企業が定期的にまとめる決算書の作成ルールの一つである国際会計基準(IFRS)に関する調査報告書をまとめた。同基準を採用する大企業の9割が導入メリットを享受していると回答。企業のグローバル展開で海外に広がる子会社の財務が管理しやすくなり、金融庁は「当初の想定より早いペースで採用が進んでいる」とみている。
IFRSは英ロンドンの国際会計基準審議会(IASB)が作成した会計基準。世界100カ国以上で採用されている。日本では2010年3月期決算から企業が任意で使えるようになり、15年3月末時点で75社が導入済みか採用を予定している。これらの企業の時価総額は約108兆円で、全上場企業の約2割を占める。
調査は金融庁が今年2月末時点でIFRSを採用する60社から回答を得た。
IFRS導入後のメリットを聞くと、「経営管理を効率化」(27社)が最上位だった。三菱商事は海外90カ国、800超の関係会社を抱えている。以前は米国基準で管理していたが、海外関係会社と同じIFRSを採用することで「グループ全体の共通の『ものさし』として経営管理しやすい」と効果を挙げる。
他のメリットでは「海外投資家への説明の容易さ」(7社)が目立った。武田薬品工業は「海外の投資家にわかりやすい情報を提供するためには、海外で広く普及している基準を採用することが有益だ」としている。
またIFRS導入の際に新たな会計システム構築にかかった費用を聞いたところ、回答があった48社のうち約7割にあたる32社で1億円以上かかっていた。IFRS導入にはコスト負担が大きいことも明らかになった。
会計基準を巡っては国内には日本基準、米国会計基準、IFRSの3つがある。国内の上場企業のほとんどが日本基準を採用しているが、政府は成長戦略でIFRSの適用拡大を目指すことを盛り込み、金融庁は今回の調査結果を通じて各企業にIFRSの適用に向けた議論を促したい考えだ。