【ドバイ=久門武史】イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ」への空爆を1カ月近く続けたサウジアラビアなどスンニ派諸国は21日、空爆作戦の終了を宣言した。目的を達したとして、政治解決に軸足を移す方針だ。ただ22日も限定的な空爆を加え、今後も衝突が続く恐れがある。イエメンで対立する各勢力の和解は描けず、国家再建の道は険しい。
サウジは「決意の嵐」作戦の成果について「フーシの重火器や弾道ミサイルを破壊し、サウジや近隣諸国への脅威を排除した」と強調した。次の段階として、イエメンの安定に向けた政治解決や人道支援を柱とする新たな作戦に移行すると表明。フーシの対応によっては攻撃を続けるとした。
AFP通信などによるとサウジ主導のスンニ派諸国軍は22日、イエメン南部タイズに空爆を加えた。フーシがタイズの軍事拠点を占拠したのを受けた措置という。
これまでの作戦でサウジは一定の成果を上げたが、フーシは2月に制圧した首都サヌアなどをなお掌握している。サウジが支持するハディ暫定大統領は3月末にイエメンを脱出し、滞在中のサウジから帰国するメドは立たない。イエメンにサウジが望む新体制ができるかは不透明だ。
ハディ氏は22日のテレビ演説で、帰国して国家再建を目指す考えを強調した。ただハディ氏が帰国しても反対勢力が協力するかは見通せない。外交関係者は「国民が受け入れず、サウジがハディ氏に固執する限り政治解決は難しい」と分析する。
サウジ主導のスンニ派アラブ諸国は3月26日、フーシの勢力拡大を受けてイエメンへの空爆作戦を始めた。民間人を含む犠牲は日に日に拡大し、世界保健機関(WHO)は死者が944人以上に達したと発表。国連は人道支援を訴えていた。
混乱拡大に乗じ、イエメンを拠点とする国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」は南東部の空港を制圧するなど動きを活発化させている。AQAPの台頭を放置したままでは周辺国へのテロの脅威といった懸念が残る。サウジ内務省は20日、「商業施設や国営石油会社サウジアラムコの施設を狙った攻撃の可能性を示す情報がある」とし、警戒を強化したことを明らかにした。
一方、イランのザリフ外相は22日、サウジなどの空爆作戦終了を「好ましい展開だ」と歓迎し「緊急の人道支援、イエメン国内の対話」を求めた。シーア派の大国イランはフーシを支援しているとされ、サウジ主導の軍事介入をやめるよう重ねて要求していた。