【香港=粟井康夫】香港政府は22日、2017年の次期行政長官選挙に向けた制度改革の最終案を立法会(議会)に提出した。中国の全国人民代表大会(全人代)の昨年8月末の決定に従い、民主派からの立候補を事実上排除する内容だ。
香港政府は関連法案の成立を目指し世論への働きかけを強める構えだが、民主派議員は否決する構えを崩していない。7月上旬までの関連法案採決に向けて駆け引きは激しさを増しそうだ。
最終案は業界団体の代表ら1200人で構成する指名委員会を設け、第1段階では120~240人の推薦が得られれば指名委の選考に名乗りを上げられるとした。5~10人がエントリーできる計算だ。
だが実際に長官選に出馬するには第2段階の指名委の投票で過半数の支持を獲得し、上位2~3人に入る必要がある。指名委のメンバーは中国本土とビジネス上の関係が深い企業幹部らが大多数を占める見通しで、中国政府の意に沿わない人物が長官選に立候補するのは事実上不可能だ。
法案成立には立法会で3分の2以上の賛成が必要だが、親中国派の議員だけでは足りず、民主派の議員27人から4人以上が賛成に回ることが条件になる。政府ナンバー2の林鄭月娥政務官らは先週から民主派議員と個別に会い、法案への賛同を呼びかけているが「今のところ1人の賛成も得られていない」(政府幹部)。
昨年9月末から79日間にわたって道路を占拠するなど大規模デモを主導した学生団体も「偽りの普通選挙だ」と反発し、民主派議員に法案を否決するよう迫っている。
だが法案を否決すれば、有権者が一票を投じる普通選挙そのものが白紙となり、業界団体の代表だけで長官を選ぶこれまでの仕組みが残る。中国政府は「香港の立法会が法案を否決しても、選挙制度改革をやり直す考えはない」との立場を明確にしている。
香港政府は「17年に普通選挙を実現すれば、将来に制度を修正する余地も残る」と説明している。大規模な宣伝キャンペーンを展開し、立候補に制限があっても一人一票をまず実現すべきだとする有権者層に働きかけていく作戦だ。
政府の最終案発表を受けて、香港大学など3大学は共同世論調査を近く実施する予定だ。政府内には「改革案への支持が6~7割に達すれば、民主派議員も世論を無視できなくなる」との期待感もある。