東京都の豊洲新市場(江東区)の場外観光施設を巡り、すし店「すしざんまい」経営の喜代村(東京・中央)が開発を辞退した。2016年11月の市場本体との同時開場は厳しくなり、都は計画の練り直しを迫られる。辞退の背景には都との条件交渉や近隣施設との競合、採算性確保などの問題がある。連携を期待していた市場関係者にも影響が出る中、再公募の内容、行方が問われる。
辞退の理由について都は「明確な説明を受けていない」としたが、2月に共同事業者だった大和ハウス工業が辞退したことや、近隣の温浴施設との競合などで集客力や採算を確保できないと判断したもようだ。都有地の貸付料など利用条件でも合意できなかった。喜代村は29日、東京・築地の本社で記者会見を開く。
都は今後、再公募の準備に着手する。喜代村と大和ハウス工業を選んだ公募では応札者がほかになく、選択肢が限られていた。障害となったのは場外施設として予定する2区画を一体的に開発する条件だったと都は分析しており、区画ごとに分けて公募して部分開業することも検討する。
市場関係者などの反応は厳しい。「ショック。ユニークな提案だと評価していたので残念だ」と話すのは、築地市場の水産卸会社をまとめる東京都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長。「築地場外のように人を集め、市場に注目を集めてくれると期待していた」
築地では場外市場が加工品などを市場内に供給する補完機能も果たしている。東京魚市場卸協同組合の伊藤淳一理事長は「新市場のオープンに間に合わないのはしょうがない。それより市場本体を補完する役割をしっかり果たせる事業者にやってもらいたい」とした。「温浴施設など内容面に違和感があった」とも話した。
新市場の地元となる江東区は「非常に遺憾」と担当者のコメントを発表した。観光客を呼び込めるにぎわい施設の整備を前提に新市場を区内に受け入れた経緯があるためだ。「区民、都民との約束である、市場本体施設との同時開設を果たせないことについては都に重大な責任があると認識している」としている。