【ニューヨーク=高橋里奈】国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書案に「世界の政治指導者に被爆地の訪問を促す」との記述を復活させることが難しい情勢になってきた。この文言は中国の反発で削除され、日本は復活を求めて日中間の協議を続けている。中国が強硬な態度を崩さないなか、交渉期限が接近。最終文書の採択は全会一致が原則とあって、時間切れとなるリスクが高まってきた。
NPT会議では22日の閉幕に向け、最終文書案の文言調整を続けている。「被爆地訪問」の記載については中国が「歴史をねじ曲げる手段」と批判し削除を譲らず、原爆投下から70年を迎える日本も再三にわたり記述の復活を主張するなど応酬を繰り広げてきた。日本政府外交筋は「可能な限り日本の提案を反映させる」と述べ、ぎりぎりまで交渉を続けるとした。
核軍縮や不拡散について話し合うNPT会議は約1カ月間の交渉を経て22日に閉幕予定。20日の全体会合で核軍縮や不拡散などの基本合意を目指したが、フェルキ議長は「核保有国と非保有国の意見の隔たりは依然大きい」と述べ、21日早朝まで合意を目指す非公式協議を続けるとした。だが「核兵器禁止条約」に道筋をつける「核の非人道性」議論で対立が収まる兆しは見えず、最終文書案をまとめても加盟国の合意が得られるかは予断を許さない。