東芝は22日、不適切会計問題で第三者委員会が調査する範囲を発表した。すでに500億円の利益減額見込みを公表しているインフラ関連に加えて、テレビやパソコン、半導体という主力事業の大半が対象になる。仮に、利益の大半を稼ぐ屋台骨の半導体で問題が出てくれば、業績への影響は一気に膨らみかねない。全社的な管理体制のずさんさが浮き彫りになった形で、経営陣の責任問題に発展する可能性もある。
システムLSIなどを生産する大分工場(大分市)
証券取引等監視委員会に届いた内部通報がきっかけで発覚した不適切会計を発表したのは4月3日。約1カ月半たって外部の専門家による本格調査がようやく始まるが、期間は示さなかった。「範囲が広がり、場合によっては深刻な事態に発展するかもしれない」と金融庁幹部は身構える。
東芝の説明では、テレビなど映像事業で販売促進費を計上する時期を検証する必要があるという。パソコン事業では部品供給の取引で生じる損益の計上時期や金額の妥当性を検証する。会計監査を担当したのは新日本監査法人だった。
影響の広がりが注目されるのが、連結営業利益の8割を占める半導体だ。ディスクリート(単機能半導体)やシステムLSI(大規模集積回路)を中心に、在庫評価の妥当性を検証するとした。資産価値を実態より高く見積もり、減損処理を免れていたなどの問題も考えられる。
半導体の中でも最大の中核であるスマートフォンなど向けフラッシュメモリーは、今のところ対象に入っていないもようだ。だが調査が進んで何らかの問題案件が確認されれば全体への影響は計り知れない。
先行して調査したインフラ関連では、長期の工事で進捗度合いに応じて売上高や費用を見積もる「工事進行基準」と呼ぶ会計処理の運用がテーマだった。22日は、テレビや半導体で「会計処理の妥当性に懸念を抱かせる資料が見つかった」としており、第三者委は、意図的な利益水増しや不正がなかったかどうかも含めて調査する。
売上高6兆円を超す巨大企業だけに、個別案件の会計処理を詳細に調べるには相当の期間と労力を要する。調査は時間との戦いでもある。
有価証券報告書の金融商品取引法上の提出期限は6月末。間に合わなければ東証から監理銘柄に指定される可能性がある。やむを得ない理由がある場合は1カ月間の期限延長が認められ、今後申請に踏み切る選択肢もある。定時株主総会も例年通り6月中に開催するのはほぼ難しい状況だ。
株式市場では「内部統制への疑念や業績の不透明感が強まり、ますます投資しにくい」(外資系投資顧問の運用担当者)との声が出ている。