政府は1日、2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)案を決めた。老朽原発の稼働延長を前提に原子力の比率は20~22%と、13年度の1%から大幅に増やす。太陽光などの再生可能エネルギーは原子力をやや上回る22~24%とする。今後少なくとも3年ごとに電源構成を見直すことも明記し、将来の変更余地を残した。コスト抑制と環境配慮を掲げた新しいエネルギー政策がようやく動き出す。
同日開いた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の専門委員会で大筋了承された。5月26日の前回委員会では一部の委員から「(原発を)可能な限り減らすとはいえない」との意見書が出され、結論を持ち越していた。最終案には原発の再稼働に向けて国が前面に立つことなどを新たに盛り込んだ。
一般から意見を募るパブリックコメントを経て、7月にも正式決定する。政府はこの案を基に30年までに温暖化ガス排出量を13年比26%削減する目標を固めており、7日からドイツで始まる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で安倍晋三首相が表明する見通しだ。
新しい電源構成で重視したのはコストだ。震災後に原発の相次ぐ停止で火力発電に使う化石燃料の輸入が増え、電気料金は2~3割上昇した。政府は原子力の発電コストは安いと判断しており、再び活用すれば料金を抑制できるとみている。稼働から40年以上の老朽原発の運転延長も織り込んだ。原発の安全性に疑問を持つ世論に配慮して大震災前の約29%よりは低くする。
再生エネは「最大限の導入拡大と国民負担の抑制を両立する」とした。発電量が天候に左右される太陽光と風力は合計でも9%弱にとどめる。一方、安定して発電できる地熱や水力、バイオマスは最大15%程度まで引き上げ、メリハリをつける。再エネ全体の比率を30年度には13年度の約2倍に高める方針だ。
12年度に始めた固定価格買い取り制度では太陽光が急増し、国民負担の増大が課題となっていた。経産省は制度を見直し、家庭や企業の上乗せ負担を少しでも和らげる。
原発や一部の再エネを大幅に増やす代わりに、温暖化ガスの排出量が比較的多い火力発電は減らす。石炭火力を13年度の30%から26%に、液化天然ガス(LNG)火力は43%から27%とする。中でも排出量が多い石炭火力を新設する場合、政府は発電効率の高い設備の設置を義務づける。
最終案には今後、少なくとも3年ごとに電源構成を見直すことも明記した。今回の電源構成案の実現には不明な点もあるためだ。例えば老朽原発については現状では原子力規制委員会の審査に合格しなければ、運転開始から40年以降は動かせない。世論や政策次第で柔軟に数値を変更できる余地を残した電源構成との見方も出ている。