財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は1日、2020年度までの財政健全化に向けた報告書をまとめた。医療や介護などの社会保障費の伸びを年0.5兆円に抑えるよう提言。70歳以上の高齢者が支払う医療費の上限額を引き上げたり、高所得者を対象に年金の支給額を減らしたりすることを求めた。教育では国立大の授業料の引き上げの検討を提案した。
財政計画の報告書を受け取る麻生財務相(右)(1日午前、財務省)
麻生太郎財務相は1日午前、財制審財政制度分科会の吉川洋分科会長から報告書を受け取った。麻生氏は同日夕に開く経済財政諮問会議で報告書の内容を説明し、6月末にまとめる20年度までの財政健全化計画への反映を目指す。
報告書の柱は年1兆円規模とされる社会保障費の伸びの抑制だ。財制審は高齢者の増加に伴う社会保障費の伸びは容認する。一方、医療技術の高度化などによる伸びは抜本的な見直しを迫る。17年4月の消費増税を受けて実施する子育て支援の充実などの影響を除くと、社会保障費の伸びは16~20年度の年平均で0.5兆円に抑えるように訴えた。
抑制に向けた具体策では、70歳以上の高齢者が入院や外来時に支払う医療費の上限額を所得や金融資産に応じて決めるよう提案した。いまは所得水準が同じでも、70歳以上の高齢者の上限額が70歳未満に比べて低い。75歳以上を対象に診療時の自己負担を19年以降に現在の1割から2割に増やすよう求めた。
大学改革では、国立大の財政基盤を強化するために授業料の引き上げを検討するよう提案した。国立大の授業料は13年度に53.6万円で私立大に比べて約4割低い。増収分の一部は就学が困難な学生の負担軽減に充てる考えも示した。公立の小中学校の教員数は少子化などを反映して、今後10年程度で4.2万人減らせるとした。
インフラ整備に使う公共事業費は人口減を踏まえて「増やせないことを前提」とする考えを示した。公共事業費は15年度当初予算で6兆円。老朽化したインフラの維持管理・更新にお金を重点配分することを求めた。