富山県立近代美術館(富山市)で開催中の「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」がことし30年を迎えた。3年に1回開く日本で唯一の国際公募展だ。第1回から関わる同館の元学芸員、片岸昭二さん(61)は「作品は時代を映してきた。多様なデザインの世界を楽しんで」とアピールする。
開館当時の1981年、国内の美術館展示の主流は絵画や彫刻。「これまでなかった作品を」と、初代館長がポスター展示を思い付いた。
当初は商業用ポスターを芸術として扱うことに批判もあった。「何枚も印刷できるから希少価値も低い」と片岸さん。だが、82年に開いた企画展「現代日本のポスター」には多くのデザイナーから称賛の声が寄せられ、85年の第1回が実現した。
世界各地のデザイナーに宛てて手紙を送り、参加を呼び掛けた。80年代の東西冷戦のまっただ中、ポーランドなど東欧からも応募があった。片岸さんは「紙質が粗悪で印刷もずれていたが、抑圧された荒々しいエネルギーを感じた」と振り返る。その後も2001年の米同時テロの恐怖を描いた作品など、世界中の出来事を反映したものを紹介し続けている。
11回目の今回は過去最多となる57の国と地域から応募があり、スイス在住の男性作家が創作した「活字デザイナーの個展」をPRするポスターがグランプリを獲得した。20年開催の東京五輪・パラリンピックのエンブレム問題の影響で、入賞作品に類似品がないか、画像チェックも導入した。
最近はインターネットの普及で企業が紙の広告を減らし「ポスターは死んだ」と言われることも。片岸さんは「絵画と違い、作家が伝えようとするメッセージを何枚でも印刷して届けられるのがポスターの良いところ」と話す。展示は11月23日まで。〔共同〕