【ジュネーブ=原克彦】世界経済フォーラムが30日発表した2015年版の「世界競争力報告」によると、日本の総合順位は前年と同じ6位だった。項目別でも大きな変化はなく、インフラなど基礎的基盤が24位と1つ上がった一方、効率化の推進が8位と1つ下がった。新興国ではインド(55位)とベトナム(56位)が大きく上昇した一方、ブラジル(75位)は通貨変動もあり急落した。
日本は多くの個別項目で小幅な上昇・低下があり、全体で横ばい。総じてインフラや教育、健康などの評価が高い一方で、財政赤字と公的債務の大きさが最下位かそれに近い順位で全体を押し下げる構図は変わらない。
もっとも上昇したのが「インフレ率」の評価で、前年の62位から一気に1位になった。同フォーラムが適正とする水準に近くなったためだ。安倍政権の経済政策「アベノミクス」が評価されたともいえるが、報告書の担当者は「構造改革など『第3の矢』は加速しておらず、効率化や技術革新ではまだやるべきことがある」と指摘する。
報告書は経済全体が安定することも重視しており、ブラジルが57位から75位へと転落したのは通貨急落などによる不安定さが要因という。一方、ロシアは45位と前年の53位より上昇した。評価に使われるデータは14年のものが大半で、次回の報告書では資源安の余波が全面的に反映される見通しだ。世界1~3位はスイス、シンガポール、米国の順で前年と同じだった。
世界経済フォーラムは各国の政官財の指導者が集まる年次総会「ダボス会議」の主催団体として知られる。競争力報告は1979年から発表しており、日本は80年代後半から90年代前半にかけて1位だったこともある。ただ、評価基準が現在のものになった05年以降では、6位が最高だ。