来年度から中学校で使われる英語の教科書の検定期間中だった昨年8月、三省堂(東京)が全国の小中学校の校長ら11人を集め、外部に見せることが禁じられている申請段階の教科書を見せて意見などを聞き、謝礼として現金5万円を渡していたことが30日、文部科学省などへの取材で分かった。
馳浩文科相は同日の閣議後の記者会見で「教科書は極めて公共性の高いもので、公正性、透明性の担保が不可欠だ」と指摘。文科省は同日、同社の北口克彦社長を呼び、文書で事実関係の報告を求めるとともに厳重注意した。
北口社長は「現場の意見を聞くことが必要だと思い開催したが、認識不足で誤っていた。大変申し訳ない」と謝罪した。同社によると、2009年と10年にも計6回、申請段階の小中学校の国語や中学英語の教科書を校長らに見せ、現金を渡していたという。北口社長は「11月末までに文科省に報告書を提出し、社内処分なども検討する」と話した。
教科書の採択は各教育委員会が教員らの意見を踏まえて行う。文科省によると、昨年集まった校長ら11人はいずれも英語教育に詳しく、5人はその後、地元の教委の採択に関わっていた。文科省の各教委への調査では、この11人が教委に三省堂の教科書を推薦するなどの不適切な行為は確認されていないという。
文科省などによると、同社は昨年8月、埼玉、大阪、福岡など11府県の公立小中学校の校長ら11人を都内のホテルに招待。文科省が検定中だった英語の申請教科書を見せ、感想や意見を聞いた。その際、全員に現金5万円と交通費などを支払ったという。
文科省の教科用図書検定規則の実施細則は、検定が終わるまでは申請中の教科書を外部に見せてはならないと規定。教科書会社でつくる教科書協会(東京)も、採択関係者への金銭提供を禁じている。