国産ジェット旅客機「MRJ」を開発中の三菱航空機(愛知県豊山町)は10日、MRJの初飛行試験を11日午前中に実施すると発表した。国産旅客機の飛行試験は双発プロペラ機「YS11」以来ほぼ半世紀ぶり。ジェット旅客機では国内初となる。5度の初飛行延期を重ねてきたMRJがいよいよ大空に挑む。
日本の航空機産業はこれまで米ボーイング機の分担製造などにとどまってきた。初飛行を終えて2017年に型式証明を取得すれば、日本は世界の航空機産業に新たな歴史を刻むことになる。
試験機は愛知県営名古屋空港(同町)から離陸、1時間半ほど飛行する。上昇や下降、左右に旋回するかなど基本的な操舵(そうだ)性能を確認する。経路は静岡県の遠州灘か北陸沖の日本海を予定しているもようだ。
主翼の強度を確認する曲げ試験など基本的な地上試験を終え、6日には時速220キロメートルで滑走する高速走行試験を実施。先月23日の初飛行延期の理由だった操舵ペダルの部品改修も終えた。
08年にMRJの開発を始めた三菱航空機は材料や製造工程の見直しなどで何度も開発を延期。「航空工学通り設計すれば動くという過信もあった」(同社の川井昭陽前社長)という。
営業では米スカイウエストや日本航空など6社から400機強(キャンセル可能なオプション含む)を受注した。採算ラインは400機とされていたが、厳しい値下げ要求で損益分岐点を越えていない可能性もある。
型式証明取得には2500時間の飛行試験が必要になる。ANAホールディングスへの初号機引き渡しは17年4~6月を予定する。「予想外の事態はあるかもしれないが、スケジュール通り進める」(三菱航空機の岸信夫副社長)。約束通りゴールするには高い管理能力が求められる。