【シリコンバレー=小川義也】米グーグルは9日、音声検索や写真検索など同社のサービスで幅広く使われている人工知能(AI)ソフトを無償公開すると発表した。外部の研究者や企業が自由に利用し、改良を加えられるようにすることで普及を促す。開発競争が熱を帯びるAI分野での主導権を確保する狙いだ。
オープンソースソフトとしてプログラムの設計図を公開するのは、画像認識や翻訳、音声認識などの分野で威力を発揮する「マシンラーニング(機械学習)」用の最新ソフト「テンソルフロー」。機械学習の一種で、人間の脳の働きをまねた「ディープラーニング(深層学習)」の手法を取り入れ、学習速度や精度を大幅に向上させた。
グーグルはディープラーニングの第一人者であるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授の会社など同分野の有望企業を次々と買収。数年前からディープラーニングの手法を取り入れたAIシステムの開発に取り組んできた。
「テンソルフロー」は最新の成果だが、「まだ完全ではなく、改善や拡張の余地がある」(同社)。商業利用も認める今回のオープンソース化は敵に塩を送ることにもなりかねないが、より多くの研究者や技術者にソフトの改良に貢献してもらうメリットの方が大きいと判断した。
スマートフォン(スマホ)向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を無償公開し、スマホ市場で8割を超えるシェアを獲得した成功体験も背中を押した。グーグルはアンドロイドそのものからは収益を得ていないが、同OSを搭載したスマホの所有者が利用する検索に連動した広告などで莫大な収益を上げている。
AIの開発を巡っては、グーグルやフェイスブック、マイクロソフト、IBMなどIT大手だけでなく、トヨタ自動車が5年間で1200億円を投じる計画を発表するなど、競争に拍車がかかっている。