【ウィーン=黄田和宏】石油輸出国機構(OPEC)は4日、ウィーンの本部で半年に1度の総会を開いた。焦点だった生産目標を巡っては現状と同程度か、それをやや上回る高水準の生産継続を追認するもようだ。過剰供給を解消するための減産に向けた協調体制を築くことができず、一段の原油安を招く可能性がある。
OPECは10月時点で、加盟12カ国の合計で日量3138万バレルの原油を生産している。総会では、生産量の実勢にほぼ合わせる形で生産枠の目標を現行の日量3000万バレルから一定量、引き上げる案が浮上している。
原油市場ではOPEC加盟国や非加盟国のロシアなどの増産により過剰供給が続いており、国際指標の北海ブレント原油は今週、一時1バレル42ドル台半ばと2009年3月以来の安値圏に下落した。北米のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)も同40ドル前後で推移する。
昨年11月の総会では、サウジアラビアなどが主導して、原油価格の高値安定よりも、供給量の確保を優先する戦略へと大きくかじを切った。生産技術の改善で急増する米シェールオイルに市場シェアを奪われるのを恐れたためだ。
サウジは自ら引き寄せたかたちの供給過剰と原油安に苦慮しており、強気の姿勢にも変化の兆しがあらわれつつある。
業界専門誌のエナジー・インテリジェンスは、OPEC加盟国や非加盟国が協調して減産することを条件に、サウジが総会で「100万バレルの減産を提案する可能性がある」と報じた。ヌアイミ石油鉱物資源相は総会の冒頭で記者団に対し、「市場の均衡を手助けする相手とは協調したい」と含みを持たせた。
もっともロシア、メキシコなどの非加盟国のほか、加盟国のイランやイラクにも減産で足並みをそろえるよう求めており、協調のハードルは高い。イランのザンギャネ石油相は総会前の3日の非公式会合後に、「経済制裁解除後に原油生産を増やすのはイランの権利であり、誰も制限できない」などと話し、減産には応じない構えだ。
加盟国全体で生産枠を達成する現行の生産方式がかえって協調を難しくしている面も強い。12年の導入以前は加盟国ごとに産出量を割り当てる方式を採用していたため、目標を順守するよう事実上強制できた。現行方式では生産を増やしたい加盟国の動きを制限できないためだ。前回6月の総会以降は、加盟国の合計が生産枠を大きく上回る状態を放置したままだ。
モルガン・スタンレーのアダム・ロングソン氏は「OPECは世界の原油生産の4割を支配するにすぎず、減産が有効なのはその他の地域で生産が増えていない場合に限られる」と指摘。昨年11月の総会でOPECが「価格よりも量」へ転換したのも、世界的な価格支配力がカベに突き当たる現実を認めたからだ。
原油価格を反転させるうえでロシアなどの非加盟国との協調が欠かせないが機運は盛り上がらない。仮に減産で合意して原油価格が底入れすれば、こんどは採算性が改善する北米のシェールオイル生産が再び息を吹き返す懸念も強い。OPECにとっては減産、現状維持のいずれでも勝算なき戦いといえる構図だ。
今回の総会では、原油の純輸入国であるインドネシアの再加盟を承認する見通し。