ドイツのフランクフルトで開かれていたアジア開発銀行(ADB)の総会が5日、閉幕した。膨大なインフラ需要が見込まれるアジアの新興国に対し、日本は技術力を生かした「質の高いインフラ」で貢献していく考えを打ち出した。
最大の出資国の日本からは麻生太郎財務相らが出席。総会開催中の演説で「日本とADBとの連携の強化を推進する」と述べた。日本政府は昨年5月、成長戦略の一つにインフラ輸出を掲げ、ADBと連携して5年間で総額1100億ドルをアジアに投融資する構想を表明している。
日本が「質」を掲げる背景には、昨年末に中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の存在がある。麻生氏は記者団に「数十年たっても長持ちすれば、結果的にコストが安くなる。日本が持っている技術の強みだ」と話した。
今回の総会は、AIIBが設立されて初の開催。中尾武彦総裁は5日の記者会見で「他の機関が同じ役割を担うようになっても、ADBの重要な役割は変わらない」と述べた。今回の総会にあわせ、ADBとAIIBは協調融資での協力で合意。中国の楼継偉財務相は「ADBはAIIBとさらに協力して欲しい」と話した。
来年のADB総会は、発足後50回目にあたり、横浜市で開催する。日本での開催は07年に京都市で開催されて以来となる。
ADBは、1966年の設立以来、総裁は日本の財務省や日本銀行のOBが9代連続で務めてきた。67カ国・地域が加盟している。(フランクフルト=奈良部健)