天皇陛下から任命のお言葉を受ける安倍晋三首相。中央は小泉純一郎元首相=2006年9月26日、皇居・正殿「松の間」
天皇陛下が生前退位の意向を示し、皇室の課題をめぐる政治の役割が焦点になっている。皇位を継ぐ「男系男子」が細るなか、かつて小泉内閣は「女性・女系」へ継承資格者を広げようとしたが、皇室をめぐる様々な動きから断念した。今回は陛下の意向が先行して報じられる異例の事態で、安倍内閣は対応を迫られる。
天皇陛下、来月「お気持ち」表明へ調整 生前退位めぐり
特集:天皇陛下の歩み
皇室とっておき
「陛下のお気持ちを受けて政府が動くことになる。憲法上、どうなのか。違和感がある」。天皇陛下が来月上旬にも「お気持ち」を表明するとの報道があった29日、安倍晋三首相に近い閣僚の一人はこう語った。
今回は報道により、陛下が「生前退位」の意向を周囲に漏らしていることが明らかになった。さらに陛下がお気持ちを表明した後、政府が対応する形になる。憲法は天皇の政治的行為を禁じるが、陛下の意向を受けて政府が動く、ともみられかねない。政権内の「違和感」の理由だ。
歴代内閣は象徴天皇制のもと、宮内庁と水面下のやり取りを重ねて陛下の意向を推し量り、世論の動向も意識しつつ皇室の課題に対応してきた。
その典型例が、2005年の小泉内閣だった。当時、男系男子は皇太子さまの弟秋篠宮さま以来生まれておらず、次世代への皇位継承に対する危機感があった。01年に皇太子家に長女愛子さまが誕生すると、女性天皇を容認する声が朝日新聞の世論調査で8割を超えた。
03年に小泉内閣で初の衆院選を乗り切ると、細田博之官房長官ら首相官邸幹部は宮内庁と水面下の協議を重ねた。05年初頭に首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」を立ち上げ、約10カ月の審議を経て女性・女系天皇を容認する報告書をまとめた。06年1月、小泉純一郎首相は国会で「報告に沿って皇室典範改正案を提出する」と宣言した。
官房長官は、今の安倍首相に代わっていた。同月、首相公邸に有識者会議メンバーを招いた会食の席で、小泉首相は安倍氏に「あなたの答弁が大事だ」と水を向けた。改正案を国会に提出すれば、担当閣僚は官房長官だ。同席者の一人は安倍氏の様子を「無言で青ざめて見えた」と話す。
そうした中、宮内庁が06年2…