台風10号の豪雨災害で、約800人が取り残されている岩手県内の孤立集落の解消に向け、自衛隊などが3日、ヘリコプターで住民を搬送する救助活動を本格化させた。台風12号が近づいているため、岩手県は同日、孤立集落がある岩泉町と久慈市に住民を避難させるよう要請した。ただ、「家を離れたくない」という住民も多く、救助活動は難航が予想されている。
「SOS」。孤立集落が点在する岩手県岩泉町の安家(あっか)地区。合砂(あいしゃ)哲夫さん(60)は台風が過ぎた8月31日、自宅の屋根に粘着テープで文字を描いた。自宅前の橋を流された。停電や食料の心配より「家族同然の牛が死ねば生活できなくなる」との思いが強かった。
地区内3カ所で岩手特産の短角(たんかく)牛55頭を肥育している。自身は翌1日に自衛隊のヘリに救助され、親戚宅などで過ごした後、3日朝にカップ麺やおにぎりを背負って川を渡り、片道3時間かけて孤立した自宅に戻った。昼すぎには離れた別の牛舎に歩いて移動し、牛の世話をした。「もうへとへとだ。道路が直らないと、どうしようもない」
岩手県久慈市の佐藤律子さん(…