経済産業省は5日、大手電力が原子力や石炭火力発電所でつくった安い電気を義務的に新電力に供給させる「新市場」の創設案をまとめた。現在、東京電力福島第一原発の事故による賠償費の一部を新電力に負担させることも検討されている。その引き換えとして、新電力の電気の調達を支援する意味もある。
5日午前、有識者による「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会で示された。
今年4月の自由化で家庭向けに参入した新電力は、発電施設を持っていなかったり、自前の発電量だけでは足りなかったりする。ビジネス拡大には、外部の電気を調達しやすい環境が必要だが、既存の卸市場で取引される電気は全体の2~3%にとどまる。大手電力が市場に供給する電気の量が少ないためで、新電力側は「不公正な競争条件だ」と主張していた。
このため経産省は安定供給(ベースロード)電源としている原発などの電気について、大手電力に一定量の供給を義務づける「ベースロード電源市場」をつくる。2020年度をめどに新電力が求める需要の3割ほどを提供させる。大規模設備による発電なので、価格は安い可能性が高い。
福島での事故の賠償費などをめぐっては、従来想定より大幅に膨らみそうになったため、誰もが負担している送電線の使用料に上乗せして集める案の議論も進んでいる。新電力も対象で、利用者を含めて反発の声がある。新市場は、そうした抵抗感を抑える策でもありそうだ。(風間直樹、米谷陽一)