本の題名も著者も伏せた「文庫X」=3日、東京・三省堂書店神保町本店、竹花徹朗撮影
書名も、著者も、もちろん中身も隠された覆面本が、異例の売れ行きを見せている。名付けて「文庫X」。気になる本の正体は、9日に明かされる。
「怯(ひる)む気持ちは分かります」「それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです」――。手書きのメッセージがびっしり書き込まれたカバーがかけられ、透明フィルムで包まれている。わかるのは、500ページ超のノンフィクションであることと、値段が税込み810円だということだけ。それでも、心動かされた来店客が次々と買い求める。
岩手県を中心に10店舗を展開するさわや書店。JR盛岡駅の駅ビルにあるフェザン店の文庫担当、長江貴士(たかし)さん(33)が企画を考え、7月下旬から店の一角でフェアを始めた。長江さんは「最近はノンフィクションが売れない。先入観をゼロにすれば、色々な人の手にとってもらえるのではと思った」と話す。
店での売れ行きはそれまで月2、3冊。ところが「文庫X」として売り出すと、仕入れた60冊は5日間で売り切れ、11月下旬までに4500冊以上売れた。
田口幹人(みきと)店長(43)が知り合いの書店に知らせ、ツイッターでも呼びかけると問い合わせが相次ぎ、全47都道府県の650を超える書店に広がった。三省堂書店営業企画室の鈴木昌之課長(44)は「本屋の原点はわくわく感。本屋には何かがあるとアピールすることが大切で、ぴったりな企画だと思った」と話す。
発行元の出版社によると、初版…