4日、マンチェスターで開かれた、アリアナ・グランデさんの慈善コンサート=AFP時事
米国の人気歌手アリアナ・グランデさんが4日夜(日本時間5日午前)、英中部マンチェスターで先月22日に自身の公演直後に起きたテロ事件の被害者を支援する慈善コンサートを、同じマンチェスター市内で開いた。米国のケイティ・ペリーさんら大物歌手も駆けつけ、「我々は決して沈黙しない」などとテロに対する抗議と被害者への支援を訴えた。
公演会場で起きた自爆テロ事件では、少女ら22人が死亡した。前日夜にはロンドンで新たなテロ事件が起きたばかり。約5万人を収容する会場のクリケット場周辺は厳戒態勢が敷かれた。
公演では冒頭、会場を埋め尽くした数万人の観客が、テロの犠牲者を悼んで1分間黙禱(もくとう)した。約1時間後、アリアナさんが登場し、「マンチェスターはきっと大丈夫」と呼びかけると、歓喜の声と拍手がわき起こった。
世界的人気歌手、ジャスティン・ビーバーさんも参加し、「我々はテロの被害者のことを誇りに思う」と表明。最後にアリアナさんがミュージカル「オズの魔法使い」の「虹のかなたに」を歌うと、涙を流して聴き入る人もいた。コンサートが終わっても、「マンチェスターは強い」という観客の合唱が何度も起こり、観客は警備員とハイタッチやハグをして無事を喜んだ。
主催者によると、コンサートの収益は少なくとも200万ポンド(約2億8千万円)に上るとみられ、英赤十字社を通じて犠牲者らの支援のための基金に送られるという。
事件のあった5月のコンサートに来たファンには、今回の慈善コンサートの無料チケットが配られた。「8歳の娘と一緒に走って逃げた」というギスレン・マートンさん(41)は「今ここでコンサートが開けることが、『テロリストに負けない』というマンチェスターと、全世界の意志だ。アリアナが戻ってきてくれたのはすばらしい」とたたえた。(マンチェスター=河原田慎一)