荻野目洋子さん=2017年6月、山本和生撮影
愛知県の盆踊りには、J―POPなど、伝統的な音頭や民謡ではないのに老若男女が大盛り上がりする曲が多数ある。曲は毎年追加され、なかには「ダンシング・ヒーロー」(荻野目洋子、1985年)のように長く踊り継がれ、全国に広まったものも。独特の文化の背景を探った。
7月29日夜、名古屋市千種区の上野公園。上野学区区政協力委員会などが主催した盆踊り大会では、「炭坑節」や「大名古屋音頭」などの合間に「ダンシング・ヒーロー」、「おどるポンポコリン」(B.B.クィーンズ、90年)、「世界に一つだけの花」(SMAP、2003年)のほか、意外なヒット曲が次々に流れた。踊りの輪に加わっていた名古屋市北区の田中瑞穂さん(35)は「気軽に参加でき、何でもありな感じが楽しい」。昨年は15会場ほど巡ったという。
愛知県は盆踊りが盛んで、特に7月中旬から8月中旬にかけては連日のように各地で大小様々な盆踊り大会が開かれる。地域や会場で選曲は異なるが、定番の音頭などの合間に「盆踊りっぽくない曲」がよく流れる特徴は共通している。
背景には、名古屋市が本拠で全国に約2千人の師範がいる「日本民踊研究会」が大きく関わっている。
創始者の初代島田豊年(ほうねん)さん(故人)は、戦後間もない48年、県などから民踊の講習会を委嘱され、普及に奔走。師範、弟子、地域の指導者、住民らへと踊りを伝える土台を築き上げた。
現会長で3代目の可知豊親(かち・ほうしん)さん(63)によると、いま愛知県内には約600人の師範がいる。「習い事が盛んな土地柄でもあり、多くの女性たちが踊りに親しまれています」。盆踊りシーズンの前に例年開く振り付けなどの講習会には、東海3県で延べ約1万人が参加しているという。
踊りの曲に「新しい風」が吹い…