河野太郎外相に要請文を手渡す田上富久・長崎市長=外務省
田上富久・長崎市長と杉浦信人・広島市東京事務所長(同市長代理)は23日午前、外務省を訪問して河野太郎外相と面会し、政府に対し、核兵器廃絶に向けた取り組みの推進を求める要請文を手渡した。7月に国連で採択された核兵器禁止条約をめぐり、政府が「本気になって核保有国と非核保有国の橋渡し役として行動」し、実効性のある条約となるように力を尽くすことを求めた。
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特集:核兵器禁止条約
要請文は両市長名で安倍晋三首相あて。核兵器禁止条約を「被爆者をはじめとする多くの方々の願いである『核兵器のない世界』の実現への具体的な第一歩」と高く評価し、政府に対しては核不拡散条約(NPT)などの体制下での核軍縮の議論に貢献することなどを求めた。長崎市で開かれた平和首長会議総会では、10日に核保有国を含むすべての国に核兵器禁止条約の加盟を求める特別決議が採択されており、同決議も河野外相に手渡された。
田上氏によると、河野氏は両市の要請に対し、包括的核実験禁止条約(CTBT)などの批准を各国に働きかけたいと説明したという。一方、スイス・ジュネーブの国連欧州本部の軍縮会議本会議での高校生平和大使による演説が今年は実現しなかったことについて、河野氏は「日本代表として高校生が意見を発表することに異論を挟む国があり、調整ができなかった」として「高校生をその中に巻き込むのではなく、今回は別の場を用意することにした」と説明。田上氏は河野氏に「高校生の思いを届ける場を今後とも作ってほしい」と求めたという。
核兵器禁止条約をめぐっては、政府は否定的な態度を取っている。9日に長崎市で開かれた平和祈念式典であいさつした首相は同条約に触れず、式典後、被爆者から「あなたはどこの国の総理ですか」と迫られる場面もあった。(小野甲太郎)