安倍政権が掲げる「地方創生」。自治体の新事業を支える交付金が柱で巨額の予算が組まれた。しかし、拙速な手続きで文化的価値があるとされる建物が解体寸前になったり、事業の目標が未達成だったりする事例も多い。地方の所得増という目的には遠い状況だ。
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解体の危機に直面したのが「安川財閥」の創始者・故安川敬一郎氏が暮らした北九州市の旧邸宅建物だ。市は、安川電機から譲り受けて6億円で公園などにすると昨年11月に発表。観光客を呼び込むために地方創生関連の交付金を申請して費用に当てる、とした。
洋館や和館、蔵などがある。計画では和館を利用し、1926年(大正15年)着工の洋館は解体の方針。市は昨年末に交付金を申請、2月に1億6500万円の交付が決まった。
しかし、市が活用策を探る専門家らの会議をもったところ、「和館と洋館があってこそ建築物としての価値がある」(九州大大学院の木島孝之助教)などと解体反対の意見が噴出した。そのため、8月、年度内の解体を見合わせ、洋館の価値を調査し改めて利活用策を探ることになった。
旧安川邸は2000年ごろにも活用が検討された。当時も文化的価値が評価され、市の文化企画課も一体保存の考えだった。しかし、今回の地方創生事業は昨年度から建設局緑政課の担当になっていたのだ。
それまでの交付金はソフト事業…