国家戦略特区での学校法人・加計(かけ)学園の獣医学部新設が決まる約2カ月前に、山本幸三地方創生相が同学園の具体名などを伝えていたとする日本獣医師会の面会記録をめぐり、山本氏は21日、自身の発言とされる記録内容を改めて否定した。獣医師会の言い分と大きく食い違っており、野党は24日からの国会の閉会中審査で真偽をただす構えだ。
特集:加計学園問題
山本氏が昨年11月17日に獣医師会を訪ねた際、同会幹部が作成した面会記録。加計学園の具体名や自治体の負担額を挙げ「四国に(獣医学部を)新設することになった」などと山本氏が発言したと記されている。
山本氏は21日の閣議後会見で、「獣医師会からいただいた資料に四国うんぬんと書いてある。相手側の思い込みで、私が言ったかのように言われている」などと述べ、自ら加計学園や四国を特定した発言はなかったと改めて強調した。
内閣府は同日、面会時に獣医師会が配布した資料を公表した。愛媛県今治市の獣医学部構想の問題点などを指摘した資料だが、焦点となっている山本氏の発言内容を裏付けるものではない。
山本氏は20日、面会に同席した秘書官が「走り書き」のようなメモを書いたものの、すでにないと説明。21日には「(獣医師会側の発言は)資料と同じものだから、後で廃棄した」と語った。
山本氏が、今治市や愛媛県の財政負担の額を伝えていたと記録されている点については、「(獣医師会の)北村(直人)顧問から『今治市の財政が破綻(はたん)するんじゃないか』という話があった」とし、今治市に問い合わせた額を面会の場で伝えたと説明した。
学部新設を「1校限り」に絞った経緯については、「北村さんから1校にしてくれという発言があった。基本的にはショートメールできた」と述べた。
山本氏は面会の場で、今治市のほかに学部新設を提案していた京都府・京都産業大に言及し、「京都もあり得ると述べた」としている。今治市・加計学園を前提にした発言をしていないことの根拠に挙げている。
この点について、複数の獣医師会幹部は21日、取材に対し、面会で山本氏から京都について言及があったことを認めた。そのうえで、山本氏が「放っておくと京都が続いてくる」と発言したとする記録が残っていると明らかにした。加計学園が今治市に獣医学部をつくるのが前提で、さらに京都にも学部新設を認める可能性を示唆した発言だと受け止めたといい、ここでも両者の認識は食い違う。
面会の場では、獣医師会から山本氏に「百歩譲って今治市だけだが、厳正に審査してほしい。特区は民間活力の利用なので、加計学園側からは全額費用を持つと確約を取るべきだ」と伝え、学部をつくるのであれば今治市に限るよう要請したという。
同会はこれらのやりとりについて「面会記録に残しているが、公表は差し控える」としている。(星野典久、岡崎明子)