直接観測に使った観測装置「ドロップゾンデ」を持つ坪木和久教授
台風の予測精度を上げようと、名古屋大学などの研究グループが飛行機を使って台風を直接観測する研究を始めた。気象庁は台風の直接観測はしておらず、研究グループはこれらの実測値の蓄積により、将来的には風速毎秒67メートルを超える「スーパー台風」の予測にも役立つと期待している。
気象庁は現在、地上にある観測所のデータや、気象衛星から得られる雲の動きや形、温度などの情報を予報モデルに取り込み、台風の強さや進路を予測している。だが、強い台風ほど進路や強さの予測が難しく、進路については3日前で平均約250キロ程度の誤差が生じているのが実情だ。
研究グループの直接観測はジェット機を使い、「ドロップゾンデ」と呼ばれる観測装置を台風の目や、台風の雲の中に投下する。装置が海に着水するまでの約15分間、気温、湿度、気圧、風向、風速などを計測し、データはリアルタイムで1秒ごとにジェット機内の機器に送信される。
10月21日には、日本列島を直撃した超大型で非常に強い台風21号の直接観測に成功。沖縄県宮古島の東の海上を進む中心気圧925ヘクトパスカルの台風に観測装置を21個、翌日にも5個投下して観測した。
21日の中心気圧は920ヘクトパスカル前後で、気象庁の予測とほとんど変わらなかった。しかし、22日は気象庁の推定930~940ヘクトパスカルに対し、実際は923ヘクトパスカルで、北上してもかなり強い勢力を保っていたことがわかった。台風の目の直径は約90キロあり、目の中に入って観測できたのは貴重だったという。
名大宇宙地球環境研究所の坪木和久教授(気象学)は「台風には個性があり、スーパー台風などの強い台風ほど直接観測してみないとわからない」と話す。
台風は海面から約1キロまでの…