自民党の税制調査会は29日の会合で、会社員向けの減税措置である「給与所得控除」を縮小し、高所得者を中心に増税する方針で一致した。年金受給者向けの「公的年金等控除」の見直しでは、年金以外の収入が1千万円以上の人の控除額を10万~20万円減らして増税する方向で調整に入る。
公的年金等控除については、年金以外の収入が年1千万円以上の人は控除額を10万円、2千万円以上の人は20万円程度を減らす案を軸に検討する。対象は年金受給者全体の1%未満とみられ、収入が1500万円の人で年約3万円の増税となる見通しだ。また、多額の退職金を年金の形で受け取るなど、年金自体の収入が1千万円以上の人も約3千人近くにのぼり、こうした人には、いまは青天井の控除額に新たに上限を設ける方向で検討する。
公的年金等控除は、経済力が落ちる高齢者の生活に配慮した減税措置だが、政府・与党は、十分な収入がある人に限って増税すれば、理解を得られるとみている。
この日の自民税調の会合は非公開で開かれ、額賀福志郎・小委員長は会合後、「働き方の多様化にしっかりと対応していくということだ」と説明した。会社に所属せずに働く人が増えているため、高収入の会社員を増税し、フリーランスや個人請負などで働く人は減税にする方針で、こうした見直しの方向性に異論は出なかったという。
具体的には、給与所得控除を高収入の会社員を中心に縮小し、納税者すべてが受けられる「基礎控除」を増やす。税調幹部の間には「消費を支えている高所得者にも配慮すべきだ」という意見もあり、増税となる年収の線引きを含め、詰めの議論に入る。(長崎潤一郎、南日慶子)