史上初めて、中学生で五段に昇段した藤井聡太五段(15)がハイペースで白星を積み重ねている。第11回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社)では、17日に控えた本戦準決勝まで勝ち上がった。今年度の勝ち数54は全棋士でトップ(2月14日現在)。2002年生まれの藤井五段と数多く対戦しているのが、1990年代生まれの棋士たちだ。次代を担う彼らは、一回り年下の大型新人に脅威を感じると共に、大きな刺激を受けている。
【特集】名人への道 藤井聡太
藤井五段は2016年12月のデビューから約半年間、負け知らずだった。昨年7月、その連勝を「29」で止めたのが、加古川青流戦で優勝経験がある佐々木勇気六段(23)。同月、2敗目を喫した相手が、佐々木六段と子どもの頃から競い合ってきた三枚堂達也六段(24)だ。
佐々木大地四段(左)に敗れた藤井聡太五段(当時四段)。佐々木四段も1990年代生まれの一人だ=昨年9月、東京都渋谷区
三枚堂六段は3年前、藤井五段がまだプロ入り前の二段だった頃に将棋を指したことがある。研究仲間の三浦弘行九段に誘われ、群馬県の三浦九段の実家で「将棋合宿」をしたのだ。何局か指したが、ある将棋では、自分が気づいていない鋭い手順で玉を詰まされた。「驚いた。強くなるな、と思った」
三枚堂達也六段
その後の藤井五段の成長は、想像を上回るものだった。史上最年少で棋士になり、プロ入り後は先輩棋士に連戦連勝。「すごい」と驚き、「将棋界を盛り上げてくれた」と喜ぶと同時に、こうも感じた。「藤井君に棋士全体がやられている、という印象になるのは少し悔しい」
公式戦初対局は、若手棋士が対象の「上州YAMADAチャレンジ杯」の準々決勝。持ち時間20分で、使い切ると1手30秒で指す早指し戦だ。攻守が度々入れ替わる激戦となり、終盤で藤井五段がチャンスを逃した。その後も、互いに粘り強さを発揮する展開が続いたが、最後に勝利をもぎ取ったのは三枚堂六段。手数は、通常の対局の2倍近い219手だった。
この勝利で、三枚堂六段がつかんだ大きな手応えがある。「自分は、注目されている舞台で勝てる棋士なんだ」。YAMADA杯ではこの後も勝ち進み、優勝。20歳で棋士になって以来、トーナメントで初めて頂点に立った。
今年3月、再び藤井五段と対戦する。第76期将棋名人戦・C級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の最終10回戦。相手は一つ上のC級1組への昇級をすでに決め、自分は昇級の可能性がない立場だが、「長い持ち時間で指すのが楽しみ」と話す。
昨年の朝日杯で優勝した八代弥…