国内未承認の抗がん剤
欧米で承認されているが国内では未承認の抗がん剤がのべ65種類あり、薬剤費がわかっているうちの約8割、45種の1カ月の薬剤費は100万円を超えることが、国立がん研究センターの調べで分かった。うち3種は月額1千万円を超す。新たなタイプの抗がん剤開発が進み、価格が高騰している現状が浮かんだ。
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集計は4月4日時点。米国での平均的な価格に基づき、1ドル100円で計算した。領域別で最も未承認薬が多かったのは、リンパ腫などの血液がんで30種類。次いで泌尿器11種、乳腺5種、皮膚4種だった。
65種の中には、薬剤費が判明していない7種が含まれる。わかっている58種の78%にあたる45種の月額の薬剤費は100万円を超していた。65種には欧米で承認や申請が取り下げられたり不承認になったりした薬も5種含まれる。41種は2015年以降に承認された比較的新しい薬だった。
最も高額な薬は、米国で2017年8月に承認された急性リンパ性白血病向けの「キムリア」。自身の免疫細胞に遺伝子操作をしてがんを攻撃する力を高めて体内に戻す「CAR―T細胞療法」と呼ばれる治療法で、1カ月あたり約4700万円。国内でも4月、製薬大手ノバルティスが承認申請をしている。
ほかに1千万円以上だったのは、リンパ腫と骨肉腫の薬。500万円以上は10種あった。製造が難しい新しいタイプの薬や対象患者数が少ないことが価格を押し上げているとみられる。
調査した同センター先進医療・費用対効果評価室の野口瑛美医師は「未承認の薬を国内でも使えるようにしていくことは大切だが、患者の経済的な負担にどう対応するのか、制度のあり方も考えていかねばならない」と話す。
国内未承認でも、乳がんや肺がんなど患者数の多いがんでは、開発中の薬が多い。だが希少疾患の多い血液がんでは、未承認30種のうち17種が国内では開発に着手されていないという。野口さんは、患者数が少ないがん治療薬の開発について、承認方法も含めて新たな政策を検討する必要があると指摘する。
調査結果は同センターのホームページ(
https://www.ncc.go.jp/jp/senshiniryo/iyakuhin/index.html
)で公開されている。(月舘彩子)
未承認薬使う場合は
未承認薬を使う場合、その治療に公的医療保険は適用されないが、治療に伴う検査や入院料などに保険を適用する制度もある。2016年に始まった「患者申出(もうしで)療養」制度だ。海外で承認され、国内未承認の抗がん剤を使う治療も、この制度の対象になりうる。