財務省が23日に公表した森友学園との国有地取引をめぐる交渉記録。貸し付けや売却に至るまでの財務省側と学園側との詳細なやり取りのほか、複数の政治家の名前も記載されていた。
【特集】森友学園問題
学園は2013年9月、国有地の取得を近畿財務局に要望。学園と財務局は15年5月に土地を当面貸す契約を結んだ。交渉記録によると、契約に至るまでの間に、貸付料をめぐっては、財務局が同年1月9日、年額として「3400万円程度」と具体額に言及。これに対し、学園の籠池泰典理事長(当時)は「高すぎる」と反発していた。
すると、籠池氏はさっそく行動に出る。交渉記録によると、北川イッセイ元国交副大臣の秘書官から国側に問い合わせがあったのは6日後の同月15日。秘書官は「財務局から示された概算貸付料が高額であるため、副大臣に面会したい」と学園側から要請があったと告げてきたという。
籠池氏はその後も、時には「声を荒らげて」(1月27日付の文書)貸付料の減額を要求。互いが契約に合意する3月の「見積もり合わせ」でも、学園の提示額が財務局の約3300万円を下回り不調に終わった。籠池氏はその際、「怒って一方的に退室」したという。
籠池氏は10日後、「国も歩み寄りが必要。それが交渉ではないか」と減額を要請したが、財務局は応じなかった。その後、学園側が「土地が軟弱地盤」と指摘したことから、不動産鑑定をやり直し、15年5月に約2730万円で貸し付け契約を結んだ。16年1月付の記録には、籠池氏が土地取引を「鴻池(祥肇)議員の口利きで進めてきた話」と表現する記載もあった。
売却契約に至る経緯では、学園が16年3月11日、土地から「新たなごみが見つかった」と財務局に報告した際のやり取りもあった。籠池氏の妻、諄子氏は「ごみを撤去する費用がかかり、更に工期も延びてしまう」と強調。「支障があるから連絡しているのだろう! (激高)現地で確認しろ」との発言も記されていた。
これまで、財務省は事前の価格交渉を否定していたが、交渉記録からは、売買交渉でも具体的な金額のやり取りがあった可能性が強まった。
学園側は同24日、ごみの撤去費を売買額から差し引くことを条件に土地の購入を財務局側に伝達。5月18日の記録によると、籠池氏の発言として「金額は限りなくゼロに近いものであるべき」とあった。
財務局の職員も翌19日に籠池氏に電話を入れ、「このまま、物別れで売却の話が進まないことは残念」と発言。さらに「売り払いの話を進めさせていただく方が貴学園にとっても有益ではないかと考え、昨日の今日ではあるが電話させていただいた」と伝えていた。
籠池氏も「納得のいく形で提案してもらえば購入を考えたい」と応じ、翌6月、ごみの撤去費などを大幅に値引く形で売買契約が結ばれた。
森友学園の国有地取得をめぐる経緯
2013年9月2日 森友学園が国有地の取得を近畿財務局に要望
15年5月 財務局と学園が10年以内の売買を約した定期借地契約
16年3月11日 学園が「新たな埋設物を発見」と財務局に報告
15日 籠池泰典氏が財務省理財局の担当室長と面会。室長は土地取引を「特例」などと伝える
6月20日 財務局が鑑定価格からごみ撤去費8億1900万円などを差し引いた1億3400万円で学園に売却