栃木県民の「海」として親しまれる井頭公園の「一万人プール」(真岡市下籠谷)。「万プー」の呼び名で愛されて45年、今も海なし県のサマーライフには欠かせない存在だ。今年は7月13日にオープンする。
「万プー」は1973年、「海なし県に海を」のコンセプトのもと県主導で建設された。管理は井頭公園指定管理グループが行っている。敷地面積約6万8千平方メートルのうちプール面積は約1万平方メートル、関東地方でも屈指の広さを誇った。1人1平方メートル占有するとして、1万人が入れることから「一万人プール」と称された。ただし、リニューアルで飛び込みプールなどがなくなり、現在は約9200平方メートルになっている。
波のプールや流れるプールなどが人気を呼び、地下水をポンプアップして使用していることから水が冷たいのも売り。最盛期はオープン5年後で、シーズン中には約44万人が訪れた。90年にはウォータースライダーが登場。チューブ式としては当時日本一の長さを誇った青のスライダーは連日、大にぎわい。「万プーに行けば必ず知っている人に会う」と言われたほどだ。
しかし、レジャーの多様化や少子化とともに入場者は徐々に減少し、97年からは10万人台になった。2011年は東日本大震災の影響で休場を余儀なくされ、昨年の入場者数は約12万人。晴天に恵まれなかったこともあって、前年から約1万6千人減少した。
苦戦はしているものの、2カ月足らずで10万人以上を集める県内屈指の人気レジャー施設であることは間違いない。今年は50周年を迎える真岡青年会議所との共催で、「夢」をテーマにした「万プー DREAM FESTA 2018」を8月5日に行う。ライブステージや熱気球体験、一万人プールで夢を叫ぶイベントなどが予定されている。
海水浴は茨城などに行くしかない県民にとって、近くで水遊びができる場所は貴重だった。宇都宮市在住の女性(49)は「幼いころは両親に連れられ、学生時代は友達と行き、結婚してからは子供を連れていく。万プーは宇都宮周辺の住民にとって、夏になくてはならないもの」と語る。
監視員のアルバイト歴18年の市村敦さん(39)は、真岡市内で自営業を営んでいるが、夏になると、店をアルバイトに任せて万プーに駆けつける。溺れかけている人を何人も助けたこともある。「万プーが大好き。広々とした空間とみんなの笑顔に触れられるのがいい」と話している。(斉藤勝寿)