英国政府が今年、「孤独担当大臣」を置いた。見知らぬ人ともパブに集いビールとサッカー観戦で盛り上がる英国人だが、成人の5人に1人が孤独を感じているという。孤独が長引けば健康を害しかねないとの認識も広がっている。(ロンドン=下司佳代子)
かつて炭鉱で栄えた英西部ニースに住むロリータ・マクアリスターさん(77)は2年前、深い孤独に襲われた。きっかけは脳卒中。体が思うように動かなくなり、シャワーも化粧も面倒に。食欲が減り、気力が奪われ、18カ月間、家から出られなかった。
知人に勧められ、高齢者を支援する「ロイヤル・ボランタリー・サービス」に電話すると、登録ボランティアのエディー・ジェンキンスさん(63)を紹介された。2人で週1回、公園を散歩したりランチをしたり。マクアリスターさんは「行きたい所に行き、頼れる人が訪ねてくれるだけで、世界は大きく変わる」と実感した。
英国では75歳以上の半数以上が独居だ。ジェンキンスさんは「以前は教会やパブで世代を超えた交流があったが、そんな近さは失われつつある」と心配する。
高齢者だけの問題ではない。全…