稽古を重ね、競争の激しい大相撲の世界で活躍する富山市出身の朝乃山関(24)=高砂部屋=に、勝負に挑む際の気持ちの切り替え方や球児へのメッセージを聞いた。
過去最多700試合をライブ中継 バーチャル高校野球で全試合中継の大会も
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――高校野球を観戦することはありますか
中学を卒業する年の春、入学が決まった富山商の試合を見に、阪神甲子園球場に行きました。応援は大迫力で、得点が入った際の歓声が印象的。富山商が出場した今春の甲子園も、場所中でしたがテレビで観戦していました。
――野球を見てどう思いますか
相撲は個人競技なので少しうらやましいです。野球はチームワークが不可欠。主将を中心にまとまって、つらい練習を乗り越える。調子が悪い選手を他の選手が補い、伸び悩む人を押し上げることもできます。仲間と一致団結できるのが魅力ですよね。
――一方で相撲と通じるところはありますか
僕らは一場所で15番取ります。初日、2日目と落としても、その後に巻き返して勝ち越せたらいい。野球も、先に点を取られても九回までは分からない。うまく切り替えることが大事だと思います。
――どうしたらうまく切り替えられますか
僕の相撲はとにかく前に出ること。前に出て負けたら仕方ない。ベストを尽くして打たれても、まだ試合は続く。その時は「自分が打てばチャラ」と思うことが大事。試合で動きが固くなることもあると思いますが、緊張はつきもの。集中している証拠だと、ポジティブに捉えてほしいです。
――横綱が目標ですね
横綱を見ると自分はまだまだ。出稽古で胸を借りることもあるけど、オーラでやられちゃう。高校野球も強豪校と当たると気負う人がいますよね。そんな時は「勝ったら優勝じゃん」と思えばいい。格上相手に「いっちょやったるか」と思えれば、勝ちに一歩近づいていると思う。
――相撲はいつから?
小学4年の時に学校の先生に誘われて道場に通い始めました。勝てるのがうれしくて。でも負けたら悔しかったので、勝とうと続けていました。
――やめたいと思ったことはありますか
中学3年の時に左ひじをけがして全国大会の団体戦のメンバーから外れました。練習もきつくてやめようかと思いましたが、恩師に誘われて富山商に入学しました。また相撲漬けの毎日。恩師は亡くなりましたが「横綱になれ」と言われました。恩返しがしたいんです。
――恩返しがモチベーションになっているのですね
高校時代、野球部の同級生も朝早くから練習を頑張っていました。ご家族の方も弁当作りや洗濯などで大変。僕の両親も同じように支えてくれました。恩返しをするという気持ちを忘れないでほしい。そして高校野球の経験は、社会に出ても生き続ける。つらいときに思い出してほしいです。(聞き手・高億翔)
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朝乃山英樹(あさのやま・ひでき 本名・石橋広暉(ひろき))。1994年3月生まれ。呉羽小・中、富山商を経て近畿大へ。大学4年時に全日本選手権で3位。高砂部屋に入門して2017年春場所で十両に。同年秋場所で新入幕を果たし、敢闘賞も受賞した。