23日は県立春野で準々決勝の残り2試合があり、高知と高知商が勝利した。4強はすべてシード校となった。高知は岡豊に逆転勝ちし、高知商は追手前の反撃を振り切りコールド勝ちした。24日は休養日。準決勝は25日にあり、明徳義塾―土佐の第1試合は午前10時、高知―高知商の第2試合は午後0時半から県立春野で行われる。
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影で特訓「一番怖い9番に」 追手前・西原選手
(高知商9―2追手前)
最後の夏、9番打者は秘めてきた闘志と意地を見せた。追手前の西原陸歩君(3年)。追手前がこの試合で挙げた2点は、すべて9番の一振りからだ。
追手前が2点を追う五回2死一、二塁。好機だが緊張する場面だ。でも西原君は打席で不敵に笑っていた。「これ打ったらヒーローや」。昨秋の県予選でも好機で笑って、勝ち越し適時打を放った。「同じや、いける」。スライダーを捉えると、左中間へ1点差に迫る適時二塁打となった。
この日も、9番だった。
小学生から野球を始めた。打撃が苦手でいつも下位打線だった。中学時代も9番。「守備はいいが、打撃はダメ」。周囲からはそんな評価だった。だが「打てて走れてかっこいい」と1番に憧れた。
1年秋からレギュラーに起用されたが、9番が定位置だった。昨夏の高知大会も9番。秋に新チームになったら打順が上がるかもと期待したが、変わらなかった。「高知で1番怖い9番になってやる」。そう吹っ切った。
中学時代の監督に頼み、高校でも部活の練習以外で毎週個人指導を受けた。追手前では常広直樹監督や仲間から「9番なんだから振り回すな、つなげ」とさんざん言われた。だが、ひそかに本塁打を目指してフォームを改造し、体力をつけ、特訓した。特訓は誰にも明かしてこなかった。
西原君の頑張りを常広監督も見ていた。打順を7番に上げようと思ったこともあったが、「大事な場面で打つ選手。9番に固定すれば、逆にもっと奮起するかも」と考えた。西原君の心意気に感じて「振り回すな」とは言わなくなった。
西原君は試合前、高知商のエース北代真二郎君(同)が直球の後にスライダーを投げる配球の傾向があると常広監督から聞き、打撃マシンで繰り返し練習した。その結果、五回に体が自然に反応した。
高校時代、本塁打は結局1本も打てなかったが、「1番怖い9番にはなれた」。(加藤秀彬)